ガートナージャパンは4月20日、日本のハイブリッド・ワークに関する展望を発表した。
リモートワークやオフィスワークなどを組み合わせたハイブリッド・ワークが浸透する中、ハイブリッド・ワークのあるべき環境について見解をまとめたものである。
ガートナージャパンは、ハイブリッド・ワークが普及する中での変化として、「多くの従業員は、自分にとって最も働きやすく、生産性の上がる場所や時間で働くことのメリットに気付き始めています。また、企業は、従業員の働きやすい環境としてハイブリッド・ワークを当たり前のものとして積極的に推進し、会社としての魅力を高めることが企業価値の観点から重要であると認識しつつあります」と、働く環境が重視されつつあることを指摘している。
そして、「ハイブリッド・ワークは、デジタル・ワークプレース戦略の中核として、企業戦略の重要な位置を占めるようになる」という認識の下、ハイブリッド・ワークへの取り組みは「オフィス中心型のデザイン」から「人間中心型のデザイン」への転換が必要とし、次の3つが重要になると説く。
・全従業員共通の標準環境よりもむしろ従業員個々の働きやすい環境の追求
・オフィス内の偶発的なコミュニケーションではなく意図的なコミュニケーションを促進する仕組みの構築
・目に見えるものやインプットによる評価ではなく、目に見えないものや共感ベースのマネジメントの推進
ガートナージャパンはこの取り組みにおいて、人間中心型にフォーカスしてテクノロジやサービスの活用を推進するIT部門と、「従業員自身が新たなテクノロジーやサービスを使いこなせるスキル」の重要性も指摘している。
その一方、モニタリング・ツールやSNSを用いた従業員の稼働チェックなどは、「従業員の自律的な働き方を阻害し、生産性を低下させているだけでなく、管理職と部下の間の著しいエンゲージメントの低下を招く要因」と指摘。パフォーマンス可視化ツールを採用する企業の40%は、「2025年までに従業員の生産性が落ちることが予想される」と警鐘を鳴らしている。
アナリストの針生恵理氏(シニア プリンシパル)は、「ハイブリッド・ワークの推進においては、目に見えるものではなく、見えないものを企業としていかに評価していくかといった基準を設ける機会を創ることが重要です。それには、従業員が自律的に行動して働ける環境を提供するために、従業員が自ら計画を立てて行動できる機会を与え、過剰な監視/管理から、エンゲージメント強化へと考え方をシフトさせる必要があります。さらに管理職の意識改革や能力も鍵となります。企業は、人や組織を含め、従業員がいかに快適に働けるかといった視点を『未来の働き方』に転換するための最重要ポイントとして取り入れていく必要があります」と述べている。
・プレスリリース「日本のハイブリッド・ワークに関する展望」
https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20220420
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