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金融サービス企業750社の「DX進捗度・次世代技術の利用状況」 ~ブロードリッジが世界の主要企業を対象に「DX成熟度フレームワーク」を用いて調査

フィンテック・サービスなどをグローバルに提供するブロードリッジ・フィナンシャル・ソリューションズ(本社・ニューヨーク)は、1月18日に世界の金融サービス企業を対象にした調査レポートを発表した。金融サービス企業のDXの進捗度や次世代技術の利用状況を調査したもので、先進技術の採用がどのような経営効果をもたらしているかを示すレポートになっている。そのハイライトを紹介してみよう。

調査は2021年11月に実施され、世界の金融サービス企業750社の経営層(Cレベル)またはその直属の部下が回答した。回答を寄せた企業は、資産または運用資産残高が10億~500億ドル以上の規模で、地域別の比率は、アジア太平洋25%(日本は全体の6%)、EMEA(欧州・中東・アフリカ)28%、北米47%。

また調査は、同社の「DX成熟度フレームワーク(The Broadridge Digital Transformation Maturity Framework)」を用いて行われた。企業のデジタル変革の達成状況を、「エクスペリエンス」「ワークフロー」「分析」の3つの観点で調査するフレームワークで、6カテゴリー・24項目への回答結果に基づき、企業の成熟度を「ビギナー」「インプリメンター」「アドバンサー」「リーダー」の4つに分類するというものである。

今回の調査では、DX成熟度が最も低いビギナーが25%、次のインプリメンターが25%、アドバンサー29%、最も成熟度の高いリーダーは21%という結果だった。

「今回の調査では、大手企業がデジタルファーストにこれまで以上に意欲的に取り組んでいることが確認できた。その結果、DXのリーダー企業は加速度的に成長し、初期の段階にとどまっているビギナー企業よりも収益増となる確率が1.5倍高いという知見が得られた」と、レポートは述べている。

◎トッププライオリティは「顧客体験」

個別の取り組みでは、回答企業の大半が「顧客体験の強化」をデジタル変革のトッププライオリティに挙げた。現在「取り組み中」の企業は74%、「今後1~2年の取り組み」とする企業は77%に上った。

「顧客体験の強化」に続くプライオリティは、「オペレーションの強化」「営業&マーケティングの強化」「戦略的事業計画」の順で、この順番は企業規模にかかわらず共通しているという。

◎次世代技術(AI、ブロックチェーン、クラウド)の導入

DXを支える「導入中」「導入予定」の次世代技術としては、昨年・今年の対比で「AI」が25%から61%へと最も大きく増加した(36ポイント増)。「ブロックチェーン」は15%から37%へと22ポイントの増加。ブロックチェーンは来年69%となり、今年・来年の対比では最も大きく成長する。「クラウド」は昨年78%・今年80%と、初期の導入は一巡したことがうかがえる。

このようにAI、ブロックチェーン、クラウドの取り組みが進行しているが、レポートは「技術変化の速さ、イノベーションのためのロードマップの欠如、ITインフラのモダナイゼーションへの対処が金融サービス企業の課題」と指摘している。

◎データ/アナリティクスの進展

今回の調査では、3分の2の企業が部門を超えてデータへのアクセスを可能にする「データプラットフォーム」の構築を既に開始していることが明らかになった。

データ活用に関する状況は、下図のとおり。レポートは、「リーダー企業は、データとアナリティクスの活用が順調に進んでいるもの、ビギナー企業のうち中~上級レベルに達しているのは11%で、今後注力する必要があることが示唆されている」と指摘している(図中の日本語は編集部翻訳)。

◎フレームワークの設問項目

なお、今回の調査に使用したフレームワークの設問項目(評価指標)が網羅的かつ実践的で参考になると思われるので、以下に掲載した。カッコ内の%は評価の重み付け。

◎重点分野(60%)

・デジタル化されたコミュニケーションと顧客体験(20%)

 - 紙からデジタルへのシフト
 - シームレスなオムニチャネルでの顧客体験
 - 紙からデジタルへのシフト
 - シームレスなオムニチャネルでの顧客体験
 - お客様がコミュニケーションをより理解するためにカスタマイズできるセクションを備えたデジタル・インタラクティブ・ドキュメント
 - マイクロパーソナライズされたマーケティングとコミュニケーション
 - データに基づく顧客体験の継続的な改善

・プロセスおよびワークエクスペリエンスのデジタル化 (16%)

 - プロセスのデジタル化
 - 最新のITプラットフォーム
 - ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)
 - AI/機械学習によるインテリジェントな自動化

・データと分析 (24%)

 - 一元化されたデータプラットフォーム
 - データ管理に関するコンプライアンス手続きの高度化
 - データビジュアライゼーションの活用
 - データのセキュリティとプライバシーのための高度なツール
 - 社内外データの幅広い活用
 - 予測分析の活用

◎基礎能力 (40%)

・組織(10%)

 - デジタル人材の獲得と維持
 - デジタルスキル開発
 - 変革を管理する役割の明確化

・戦略(10%)

 - 継続的なイノベーションのための文化
 - ビジョンと実行ロードマップ
 - デジタル・センター・オブ・エクセレンス

・技術(20%)

 - AI
 - ブロックチェーン
 - クラウド

・ニュースリリース「Digital Transformation Being Pushed at Faster Rate by Financial Services Firms, New Broadridge Survey Finds」
https://www.broadridge.com/press-release/2022/digital-transformation-being-pushed-at-faster-rate
・調査レポート「Fast-tracking digital transformation through next-gen technologies」
https://www.broadridge.com/resource/digital-transformation-survey-2022?

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