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特別座談会 ~ソリューション・ラボ・横浜のRPGスペシャリスト3名が語り合う「RPG技術者不足への打開策とは」

長年にわたりIBM iユーザーへのSIサービスを提供するソリューション・ラボ・横浜は2020年4月から、FF RPGをメインに据えたRPG研修サービスを開始した。RPG Ⅲで作成したアプリケーション資産の継承方法に悩むIBM iユーザーは多い。RPGの技術者不足という業界全体が抱える重要課題への打開策の1つとして、同社が掲げるRPG研修サービスの狙いと現状を、ソリューション・ラボ・横浜のメンバーが語り合う。

<出席者>

森谷 孝幸氏
ソリューション・ラボ・横浜株式会社
ソリューション事業統括
第1ソリューションサービス統括
ソリューション開発2部 部長

佐藤 尚氏
ソリューション・ラボ・横浜株式会社
ソリューション事業統括
第1ソリューションサービス統括
ソリューション開発2部 チームリーダー

高橋 昌宏氏
ソリューション・ラボ・横浜株式会社
ソリューション事業統括
西日本支店 支店長

FF RPGを主眼にした
RPG研修サービスをスタート

i Magazine(以下、 i Mag) 2020年4月から、ILE RPGやフリーフォームRPG(以下、FF RPG)を主眼にした「RPG研修サービス」をスタートしましたね。この狙いと実施の背景を教えてください。

森谷 ソリューション・ラボ・横浜は30年以上にわたり、IBM iのお客様に向けたSIサービスを提供してきました。IBM iは当社のコアビジネスの1つであり、2020年から3カ年の中期事業計画を策定した際も、自社の強みを活かすための戦略として次の4つの柱を据えています。すなわち「IBM iのお客様へのご支援」「RPG技術力のご提供」「FF RPGによるシステム開発」、そして「FF RPGを中核に据えた研修サービスのご提供」です。この中期事業計画を具現化するために、昨年4月からRPG研修サービスを開始しました。

森谷 孝幸氏

佐藤 今、50社以上のIBM iユーザー様とお付き合いがありますが、その約60%がRPG Ⅲをお使いで、残りの39%がILE RPG、1%がFF RPGという割合です。やはりRPG Ⅲのほうが多いのですが、年々ILE RPGの利用は増えていますし、FF RPGへの関心も高まっています。現在、RPGアプリケーションを保守している開発者が定年などで退社したあとも、内製で資産を継承していくとなると、若手の技術者の教育が不可欠です。その道具立てとして、まずFF RPGを学習させようと考えるお客様が確実に増えており、打開策について多くのご相談が寄せられています。

森谷 そもそもFF RPGを中核に据える研修サービスの必要性を、どこよりも強く実感したのは、実は当社自身なのです。当社には50数名のRPG開発者が在籍していますが、70%近くが40〜50歳代のベテラン技術者です。20〜30歳代のRPG技術者育成の必要性を痛感し、ここ3年ほどは若手を中心にILE RPG、FF RPGの育成トレーニングを毎年実施してきました。ほとんどはRPGの開発経験がなく、何らかのオープン系言語を習得した若手の技術者が中心です。その教育カリキュラムを作成する過程で、さまざまな気づきを得て、これはお客様にも有効だと判断し、研修サービスとしてご提供することを決めました。

ユーザー個々の運用状況や
スキルレベルに応じたカリキュラム

i Mag そのRPG研修サービスには、どのような特徴がありますか。

高橋 当社の研修サービスには3つの特徴があります。まずILE RPGやFF RPGの開発に欠かせない「RDi(Rational Developer for i)のハンズオン教育」、それに「FF RPG入門のトレーニングコース」、そして「ベテランRPGプログラマーに対するILE RPGの学び直し」です。お客様個々の運用状況や習熟度、狙いや目標などに応じて、カリキュラム内容や日数をカスタマイズしてご提供します。オンサイトで1〜3名程度、3時間の研修を5回程度実施することを想定して、受講料は30万円からです。

森谷 当社の想定では、受講されるユーザーのスキルモデルは3つあると考えています。まずRPG Ⅲの開発経験が豊富で、ILE RPGやFF RPGのスキルをもたないベテラン技術者。それからRPG ⅢやILE RPGの開発経験はあるが、FF RPGのスキルをもたない技術者。そしてRPGの開発経験は一切なく、何らかのオープン系言語のスキルをもつ技術者です。同じシステム部門に、これらのスキルレベルが混在する例も多く、当社ではその状況を見極めながら、きめ細かくカリキュラムに反映しています。

佐藤 昨年からスタートし、コロナ禍などの状況もありましたが、これまでに2社のお客様に研修サービスを実施しました。1社は6名の方々が参加し、ベテランから新人まで、RPG開発経験の長さやオープン系言語スキルの有無など、多彩なメンバーで構成されていました。そこで1日目はRDiの基本操作のハンズオン、2日目はILE RPGの基礎編、3日目はFF RPG変換の説明といったカリキュラムを組み立てました。

佐藤 尚氏

高橋 とくにFF RPGの研修では、RPG Ⅲで作成された実際のプログラムをお預かりして、ARCADというツールでFF RPGに変換したサンプルプログラムを教材にしました。日常的に作成しているRPG Ⅲのプログラムが、FF RPGで書くとこう変わるという実際のサンプルを目の当たりにすると、とても実感が沸くようで、ときには驚きや戸惑いを交えつつも、FF RPGへの理解が大きく進んだように思います。

森谷 もう1社のお客様はRPG開発経験がなく、オープン系の言語スキルをもつ若手社員の方を対象に、RPGの開発経験が豊富なベテランの情報システム部門長も参加されて、2名の受講者を対象に実施しました。こちらの会社では部門長がお一人でRPGアプリケーションを保守してこられたのですが、年齢的に定年が視野に入ってきて、自分が退職したあとアプリケーション資産をどう継承するかに悩まれていました。そこで若手社員にFF RPGを習得させることで、その解決策につながらないかと考えられたわけです。

佐藤 研修を実施して感じたのは、自分が知っている言語スキルと比較・対比させることで理解が進むという点です。たとえば後者のお客様では、若手技術者の方がVisual Basicでの開発経験があり、私も同じくVisual Basicを知っていたので、FF RPGとVisual Basicの書き方を対比させながら講習すると、理解が進むように感じました。同様にPHPやJava、あるいはRPG Ⅲの書き方とFF RPGを対比・比較しながら覚えていくのは有効だと思います。

RPG Ⅲから段階的に
アプリケーション資産を刷新

i Mag 研修サービスを受講された2社のお客様はその後、自社のアプリケーション資産をどのように継承するかについて考えを進められましたか。

高橋 どちらも、この研修をきっかけに、現状のアプリケーション資産を今後どうしていくかを真剣に検討し始めたとお聞きしています。

RPG Ⅲの資産をFF RPGに全面的に変換するのはあまり現実的ではなく、またRPG Ⅲから一気にFF RPGを習得するのは戸惑いも多いでしょう。だからRPG ⅢからいったんILE RPGを習得して、そこからFF RPGの学習につなげていく、そして改修頻度の高い一部のプログラムをRPG ⅢからILE RPGに変換する、あるいはILE RPGで作成するなどして、計画的かつ段階的にアプリケーション資産を移行していくことを考えておられます。そのなかで当社も、ILE RPGやFF RPGを利用した開発手法や教育をご支援していく予定です。

高橋 昌宏氏

森谷 アプリケーション保守をお受けしているお客様からはILE RPGやFF RPGのご相談を寄せられるケースが多く、今期はあと2社のお客様に同様の研修サービスを実施する予定です。中期事業計画を策定した1年目に研修サービスの開始を掲げ、2年目はカリキュラムの確立と、アプリケーション保守でお付き合いのあるお客様に訴求していくことを目標にしました。2022年度の来期は、これまでお付き合いのないお客様にも広く訴求し、研修をきっかけにRPGアプリケーション資産の継承についてご支援できればと願っています。

高橋 前述したように、当社のお客様でも約6割がRPG Ⅲをお使いです。そこから一気にILE RPGやFF RPGへ移行するのは、便利だとわかっていても、なかなか踏ん切りがつかないというか、どうやって前に進めばいいのか悩むお客様が多くいらっしゃいます。同じIBM iユーザーでも、アプリケーションの開発・保守の状況や人員数、スキルレベルは多種多様で、解決策は1つだけではありません。当社ではお客様の個性や目標、運用状況に応じて個々にカリキュラムを策定しつつ、今後進むべきロードマップを一緒に考えてご支援していきたいと考えています。

 


特集 ILE & FF RPGのススメ

❶FF RPG採用のメリット|IBM i技術者問題を解決し、ソース管理を高度化する「ILE & FF RPGのススメ」 ~RPG Ⅲを脱却し、プログラム資産をより有効に活用

❷FF RPG導入の課題|FF RPGの技術者が乗り越えるべき課題

❸FF RPGの習得|ILE RPGの理解がFF RPGをより魅力的にする

❹FF RPGの導入と習得|RPG Ⅲ技術者とオープン系開発者 スキルに応じた習得ステップ

❺特別座談会|FF RPGをメインに据えたRPG研修サービスを展開

 

[i Magazine 2021 Autumn(2021年10月)掲載]

 

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