POINT
・改善提案を発展させ「お客様感動創出システム」構築へ
・既存資産活用と新規開発にLANSAとRAMPを採用
・連携する営業日報も新たに開発
満足を超える感動を
お客様に提供する
大阪府寝屋川市に本社を構える中堅の建設・不動産ディベロッパー企業、 前田組は今、全社を挙げて「お客様感動創出プロジェクト」を進行中である。 代表取締役社長の前田浩輝氏は、「お客様の大切な情報を全社で共有することにより、お客様の満足と感動につなげるのが目的です。お客様満足では、ザ・リッツ・カールトンホテルの成功がよく知られていますが、当社でも満足を超える感動をお客様に提供したく思っています」と説明する。
発端は、毎月実施している全社員参加の改善提案制度で提出された「建物のカルテを作ってほしい」という1 社員の要望だった。これは、過去に手がけた新築や建物改修の記録が案件ごとに保管されていたため、個々の物件の履歴を調べるのに多数の資料に当たらなければならないという面倒な事情があったからである。さっそく経営改善委員会で取り上げ、さまざまな議論の末、「建物カルテだけのシステムを作るのはもったいない。お客様に感動を与えられる仕組みを構築しよう」となったのが、今回紹介するお客様感動創出システムである。
お客様感動創出システムは、「お客様情報」と「建物カルテ」の2つのシステムから成る。
取引に関係なく
訪問したすべてが「お客様」
この「お客様情報」システムは、それまでIBM i上で利用されてきた「顧客情報」システムとはまったく内容が異なる。「顧客情報」は受注のあった顧客に限られていたが、「お客様情報」のほうは取引に関係なく、訪問したすべての顧客が対象となる。さらに、顧客名・住所・電話番号といった基本情報だけでなく、地主なら本人とその家族、企業なら経営者と担当者全員の誕生日・趣味・嗜好・写真・地図まで記載される。そしてこれを営業情報と営業日報に紐づけることにより、顧客の詳細なプロフィールと商談情報・営業 活動履歴を一元的に閲覧できるようにしたのが「お客様情報」システムなのである。今回のシステム化では、「お客様情報」システムとCTIとを連携させ、 登録済みの顧客から電話があると、 CTIクライアントモニター上の顧客電話番号が赤色点灯し、その電話番号をクリックすると顧客情報が表示される 仕組みも作った。
一方、「建物カルテ」のほうは、新規に建物ごとにコードを振り、受注工 事、アフター台帳、定期点検、長期修 繕計画などの情報をタブ形式で区分けして表示し、さらに管理物件の図面、 画像、見積、契約書類、工事中の議事録などを保存することにした。これにより、従来、新築・改修など案件別であった建物に関する情報が集約され、 集中的に確認することができるようになった。
前田社長は、「建物は、時期がきたらメンテナンスや修繕が必ず必要になります。建物カルテにより過去の履歴を参照し、あるいは長期の修繕計画をあらかじめ立てておき常に事前にご提案していくことは、お客様にご満足いただくきっかけになるだけでなく、他社との大きな競争力になります」と語る。
短期開発を評価し
LANSAとRAMPを採用
会社側からお客様感動創出システムの開発を指示されたシステム部門では、ただちに要件の整理に着手し、次いでシステム化のためのツールの選定に入った。検討したのは2つのパッケージと2つの開発ツールで、約半年間の比較検討の結果採用したのがランサ・ジャパンの開発ツールVisual LANSAとモダナイゼーションツールRAMPである(このRAMPには開発ツールであるVisual LANSAもキットとして含まれている)。
同社は、1970年代末のシステム/34 からIBMミッドレンジ機のユーザーで、現在の基幹システムもRPGで自社開発したもの。「データの多くは既存システム(IBM i)の中にあるので、 そこから必要な顧客情報や営業情報などを簡単に取り出せ、新規開発するお客様情報システムと建物カルテシステムに融合させて照会できるようにすることを考えました。LANSAの経験は担当者2名ともまったくありませんでしたが、既存のデータベース、アプリケーション資産を活用し新規開発を最 小限に抑えられ短期導入が可能になると判断して決めました」と、情報システム担当の福永龍也氏(上席主任)は採用の理由を語る。
また、同じく情報システム担当の三村和也氏(上席主任)は、「開発を外注することも検討しましたが、人が作ったものをメンテナンスしていくことの不安があり、LANSAを新規に習得し自社開発することにしました」と説明 する。
お客様情報システムでは、本社勤務の全社員がユーザーとなり入力情報が多岐にわたるので、タブやプルダウンメニューなどを駆使して見やすく使いやすいビジュアルな画面を開発した。 項目名を見れば、直観的な入力や参照が可能である。またお客様コード番号は、登録者数が旧来の顧客情報システ ムと比べて大幅に増加することを想定 し、従来の4ケタから15ケタに変更した。さらに既存の顧客情報システムの顧客コードを入力する窓を設け、お客様情報システムを更新すると連動して同時に更新される仕組みも作った。
さらに、これと連携するシステムとして営業日報も新たに開発した。営業日報には担当者自らが入力するが、お客様コードの登録などに手間がかから ないよう効率を重視した作り込みを行った。「従来の営業日報システムは30年前に開発されたもので、お客様コードを入力するとお客様ごとに履歴 を一覧できる機能などもありましたが、コードの入力に手間取ったため、その部分は使われなくなっていました。新しい営業日報では使いやすさに 留意しました」と福永氏は言う。
開発スケジュールは、2010 年8 月にプロジェクトをキックオフ、10月にLANSAとRAMPの採用を決定し、1 カ月のツール習得期間を経て12月から開発をスタートし、今年4 月にお客様情報システムを本番稼働させた。次いで5月から建物カルテシステムの開発を進め、この10月にカットオーバーした。福永氏と三村氏は、「LANSAとRAMPは想像以上に生産性が高かった」と評価している。
COMPANY PROFILE
創 業:1934年
設 立:1958年
本 社:大阪府寝屋川市
資本金:2億4500万円
従業員数:170名(2011年3月)
http://www.maedagumi.co.jp/