IBM iユーザーの多くは
何らかの対処が必要
IBM iユーザーの間で広く使われている「Toolbox for IBM i」は、もともとはTO OLBOX/400の名称で日本IBMによって開発・販売されていたものが2006年にネオアクシスへ移管され、以来同社が拡張・メンテナンスを行ってきた製品である。
導入実績は「累計で4,000社以上」(ネオアクシスの白石昌弘ソリューション事業部 プロダクトサービス部長)あり、機能としては通信機能のほかに開発・運用支援や文書化支援なども備えるが、「IBM i用EDIツールのデファクトスタンダード」と言ってよい製品である。IBM iユーザーのなかには20年以上使い続けている企業も少なくない。
そのToolbox for IBM iがサポートしている通信手順が、JCA手順、全銀ベーシック手順、全銀TCP/IP手順である。それをユーザーは、公衆回線上で利用してEDIを行ってきたが、その公衆回線サービス(INSネット「ディジタル通信サービス」)が2024年1月に終了するため、IBM iユーザーの多くは何らかの対処が必要になっている(図表1)。
「大手IBM iユーザーの多くは、インターネットベースの新しいプロトコルに対応済みですが、中堅・中小のユーザーは80~90%が、まだレガシーのプロトコルを使い続けていると見ています。とくに多くの取引先を抱える流通分野と物流分野の企業では、接続方法も多岐にわたり、対応の遅れが目立ちます」と、白石氏は現在の状況を説明する。
Toolbox for IBM iが多数のユーザーに支持されてきたのは、標準的なプロトコル(JCA手順、全銀ベーシック手順、全銀TCP/IP手順)のすべてに対応し、EDIサーバーを別途構築することなく、IBM i 1台で運用できたからである。
しかし2007年に登場したインターネットベースの流通BMSには未対応だったので、2011年にクラウド型の「Toolbox EDIサービス」をリリース、さらにその翌年にIBM i用のV.24通信カードを利用せずに通信できる「Toolbox for UST」を発売し、ラインナップに加えてきた経緯がある。
流通BMSにも対応する
Toolbox JXクライアント
2018年5月に発売した「Toolbox JXクライアント」は、レガシー手順の後継となるJX手順に対応した製品で、「ディジタル通信モード」終了への対策となるツールである。
「JX手順は、サーバーとクライアントが通信する手順で、JCA手順と同様の運用方法で使用できます。Toolbox for IBM iと同様のインターフェースと操作感にしたのも特徴で、インターネットに接続できる環境があれば、Toolbox for IBM iのユーザーはすぐに使えます。IBM iのネイティブ環境で稼働する唯一のJX手順対応ツールです」(白石氏)
2019年4月には、流通BMS用のデータフォーマットに対応する「XML変換機能」を追加し、流通BMSによるEDIが行える機能拡張を行った。この機能を使うと、取引先からの流通BMSフォーマット(XML)の発注データをIBM iの固定長フォーマット(データベースファイル)に自動変換してIBM iに取り込むことができる。また、固定長フォーマットの出荷データを流通BMSフォーマットに変換して相手先に送信できる(図表2)。
全銀TCP/IP手順・広域IP網
対応のToolbox 全銀TLS+
そしてこの10月にリリースしたのが、全銀協が2018年6月に発表した新しいプロトコル「全銀TCP/IP手順・広域IP網」に対応する「Toolbox 全銀TLS+」である(図表3)。
全銀TCP/IP手順・広域IP網は、全銀ベーシック手順と全銀TCP/IP手順の後継となるプロトコルで、全銀ベーシック手順と全銀TCP/IP手順に、インターネットでの利用で必須になる暗号化機能を加えたものである。
「Toolbox 全銀TLS+」では、既存の業務アプリケーションの変更は必要なく、「既存のCLプログラムの通信コマンドを書き換えるだけで、すぐに使い始められます」と、白石氏は指摘する。
「Toolbox全銀TLS+もIBM i上で稼働するので、新たなEDIサーバーは不要です。Toolbox for IBM iと共存可能で、Tool box for IBM iと同じ操作感・インターフェースで利用できます。また、端末側(発呼:Aセンター)とセンター側(着呼:Bセンター)の両方の機能をもっているため、これまで端末側、センター側のそれぞれでEDIを行っていたユーザーのどちらにもご利用いただけるのが特徴です」(白石氏)
IBM iユーザーの多くにとっては、レガシーからインターネットベースのプロトコルへの移行は、これからが本番となる。
白石氏は、「新しいプロトコルへの移行は、ディジタル通信モードが終了する1年前(2022年末)には完了させておきたいところです。すると、移行作業に割ける時間は2年ほどしかなく、今から準備を進めてもけっして早くはありません」と話す。
[i Magazine 2019 Winter掲載]