IBM iでは初めての「アクティブ-アクティブ」のクラスタリング
中田 淳氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
システム事業本部
Power Systemsテクニカル・セールス
シニアITスペシャリスト
ゼロダウンタイムを実現する
高可用性ソリューション
データとデジタル技術を活用してビジネスモデルを変革しDXを推進していくと、ユーザーとシステムとの接点が増えるので、今まで以上にITインフラが重要になる。DXによりユーザーはITインフラとの接点が増え、たとえばユーザーが必要な情報に欲しいタイミングでアクセスできなかった場合、ユーザーからの信用が失われてしまうため、とくに信頼性や可用性は重要だ。
IBM i 7.4ではこうした状況を見据えて、新たな高可用性ソリューションが提供された。IBM Db2 Mirror for iである。
IBM Db2 Mirror for iは従来の高可用性ソリューションとは異なり、アクティブ-アクティブのクラスタリングが可能なため、ゼロダウンタイムを実現できる。
アクティブ-アクティブのクラスタリング製品としては、IBM Db2 pureScaleやOracle RACがあるが、IBM iには非対応だった(図表1)。
海外ではIBM iを大手銀行の勘定系システムで利用しているユーザーもあり、ゼロダウンタイムの実現が望まれていた。また、日本でも金融取引システムやグローバル企業のサプライチェーンを担うシステムで利用されるなど、24時間・365日の連続稼働が必須となるシステムが増えている。
IBM Db2 Mirror for iにより、信頼性や可用性について評価が高いIBM iに、さらなる高可用性をもたらすことが可能となる。
RoCEネットワークによる
高スループット、低レイテンシ
IBM Db2 Mirror for iの実装について見てみよう。
IBM Db2 Mirror for iを構成するシステムはプライマリ・ノードとセカンダリ・ノードからなり、別システム間でも、あるいは同じシステム内のLPAR同士でも構成が可能だ。プライマリ・ノードから外部ストレージのコピー機能により、セカンダリ・ノードがクローンとして作成される(図表2)。
外部ストレージは、IBM System Storage DS8000やIBM Spectrum Virtualize(IBM Storwize V7000など)が推奨される。外部ストレージは1台のみの場合、FlashCopy機能によりクローンを作成し、2台構成の場合はグローバル・コピー機能によりクローンを作成する。
ノード間のネットワークは通常のイーサネットではなく、RoCE(RDMA over Converged Ethernet *1)ネットワークを利用する。高スループット・低レイテンシのデータ同期が可能で、RoCE対応通信アダプタは10Gbから100Gbまでラインナップされている。最大ケーブル長は100メートルとなっており、同一データセンター内での利用が想定される。
*1 RoCE:コンピュータのメインメモリから別のコンピュータのメインメモリへダイレクトメモリアクセス(DMA)転送を行う方式。OSを介在しないため、高スループット・低レイテンシの通信が可能。大規模な並列クラスタシステムにおいて効果が高い。
2つのノードに対して
同期的にDB更新
次に、IBM Db2 Mirror for iの挙動を見てみよう。
IBM Db2 Mirror for iはアクティブ-アクティブのクラスタリングであるため、システムとしてはどちらも本番機となる。図表2の例ではノード1に「Name:鈴木、Age:24」をレコード追加しているが、両ノードに対して同期的にデータベースが更新される。
IBM Db2 Mirror for iではRPGやCOBOLによるレコード・レベル・アクセスやSQLアクセスがサポートされ、物理ファイルや論理ファイル、テーブルやビューのいずれもサポートされる。また、データベース・オブジェクト以外にもプログラムやユーザープロファイル、システム値なども同期対象オブジェクトとなっている(図表3)。
IBM Db2 Mirror for iは同期機能がRoCE対応アダプタで実装されていることもあり、HAソリューションのみとなる。このため、災害対策としてDRソリューションが推奨される。IBM Db2 Mirror for iは外部ストレージによるリモート・コピー機能や、MIMIXやQuick-EDD、Maxava HA、Hybrid SYNCなど論理複製ソリューションとの組み合わせが可能だ(図表4)。
IBM iの管理者・利用者の方々にゼロダウンタイムの高可用性ソリューションがもたらす新たなカスタマー・エクスペリエンスを、ぜひ体感していただきたい。
中田 淳氏
1998年日本IBM入社。首都圏SE部に配属され、中堅企業のAS/400インフラ構築などに従事。その後、テクニカルサポート部門へと転じ、ビジネスパートナーやIBM社内向けの技術支援を担当。2008年から大阪事業所勤務となり、西日本地区のPower Systemsユーザーへの提案活動やセミナー講演などを行っている。
[i Magazine 2019 Autumn(2019年8月)掲載]
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三ヶ尻 裕貴子氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
システム事業本部Power Systemsテクニカル・セールス 部長