基幹システムの強化に向けて
既存プログラムを可視化
来年で創業70周年を迎えるシミヅ産業は、さまざまな機械工具を取り扱う総合商社である。切削工具や研削工具から工作機械、産業ロボットに至るまで、取り扱いアイテムは30万点以上に上る。取引先は3000社以上。全国に販売網を展開し、とくに関西以西のエリアに強力な流通基盤を築いている。
同社は1978年に初めてIBMのシステム/34を導入して以来、現在に至るまで、IBM i上で販売管理を中心とする基幹システムを運用してきた。1998年にはAS/400上でB2Bの「シミヅインターネットショップ」を立ち上げ、2005年にはJava化を果たすなど、積極的にITを活用している。2013年に「Power Systems 720」へリプレースした際は、九州支店にバックアップ機を導入し、BCPを狙いにした2重化体制を実現した。
同社では基幹システムに対して、徹底した内製主義を貫いている。RPGによる手組みで開発されたシステムは長年にわたる改修・改訂を経て、現在も稼働中。情報システム室には5名が在籍し、そのうち阿部敏和室長を含む4名がRPGとJavaのスキルを備える開発者である。システムへの改訂要求は年間で10件ほど発生するが、それにもすべて社内で対応してきた。
そんな中、2014年12月に入って、「景気に左右されない企業体質への変革」をテーマに、さらなる業務効率向上を目的とした基幹システムの機能強化が決定した。全国から営業・業務部門のリーダーが集まり、ハードウェア導入を支援していたNDIソリューションズ(株)の協力のもと、基幹システム強化に関する合同セッションを開催。そこでは以下の3つの強化策が決定している。
(1) 営業活動の支援機能充実(見積フォームの統一、2重入力の削減、価格改定情報や値引き変更登録後のリアルタイムな反映など)
(2) 業務効率を高める仕組みの充実(Fax受注データの自動取り込み、マルチウィンドウの採用、各種伝票の再設計、手書き処理の解消)
(3) ネットショップに関する機能の充実(受注後の手作業削減による迅速な出荷体制の確認、商品検索機能の充実などユーザーの利便性向上)
上記の計画に沿って、2015年4月からは見積システムの刷新、マスタ再設計、伝票再設計、マルチウィンドウ対応、Faxオートメーション化、商品情報および顧客情報の再整備など、多くの開発作業が予定された。例年の作業工数をはるかに上回る規模の開発に対して、自社要員だけで対応するため、強化策の決定直後から現行プログラム資産の棚卸しが急務とされたようだ。
そこでNDIソリューションズから提案されたのが、プログラム資産の可視化ツールである「REVERSE COMET i」(NCS&A)である。
情報システム室の経験が長い阿部氏にとっては、現在稼働しているプログラム構造はほぼ頭の中に入っており、今までの改修・改訂作業に支障はなかったという。しかし今回のシステム機能強化では既存プログラムの影響を広範囲で洗い出さねばならず、人海戦術では限界がある。また今後を見据え、若手メンバーのスキル向上と後継者育成が必要との判断もあり、可視化ツールを導入することになった。
「プログラムの全情報が私の頭に入ってはいても、プログラムが可視化されていないため、ブラックボックス化を生み出し、開発が前に進まない事態を招きます。そこで何らかのツールを使って、プログラム情報を全員が共有する必要があると感じました」(阿部氏)
ちなみに同社では提案のあった2つの可視化ツールを検討したが、高額かつ高機能な海外製品に比べて、機能的にも遜色なく、コストパフォーマンスがよいと判断して、「REVERSE COMET i」の採用を決定したという。
約30日を要していたソース分析が
わずか5分で終了
2015年11月に、「REVERSE COMET i」の購入を決定。それからPCサーバーの準備、ソフトウェアの導入・環境構築、操作講習、個別カスタマイズ要件の洗い出しと対応を経て、約6週間で運用が定着した。分析対象となるプログラム本数は約3000本。導入後3カ月を待たずして、開発メンバーの生産性に目に見えて効果が出始めたという。
最も大きなメリットは、平均30日を要していた影響範囲分析などのリソース調査が5分程度で完了するという工数削減効果である。これにより、今までたとえば3カ月を要していた開発期間が、2カ月へと短縮できる。
「時間的な余裕が生まれたことで、対応件数が増え、またじっくりと企画やアイデアを練られるようになりました。さらにプログラムの影響範囲分析の正確性が増し、プログラム品質が確実に向上しています」(阿部氏)
ちなみに最も利用頻度の高い機能は、フィールド単位で、影響するプログラムをその行数まで表示できる「ソースサーチャー」と、どのプログラムが該当ファイルを使用しているかを分析する「COMET影響分析」の2つ。分析結果はExcelに自動出力して利用している。阿部氏はメンバーに対して、何らかの開発に着手する場合、必ず前もって「REVERSE COMET i」で影響範囲を可視化するように運用を徹底しているという。
第1弾の開発対象であった見積システムは、約3カ月の開発を経て、2016年4月に本稼働した。客先からFaxで届く見積依頼書を紙に出力せず、データで受け取って見積を自動作成し、顧客へ自動Fax送信する新システムでは30%の業務効率向上を達成。見積提出時間の短縮や問い合わせへの迅速回答が可能となった。顧客からの評判も上々で、新規顧客の獲得にもつながり、経営陣からも高い評価を得ているという。
2016年度の取り組み計画は、EDIなども含めてまだ半分の開発作業が残っており、「REVERSE COMET i」を活用する場面は多い。
「当社ではこうした可視化ツールの活用を第1ステップに、若手メンバーのスキル向上や後継者育成に力を入れ、今後もさらにRPGで基幹システムを発展させていく予定です」と、阿部氏は今後を語っている。
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COMPANY PROFILE
シミヅ産業株式会社
本 社:大阪府大阪市
設 立:1948年
資本金:1億7000万円
売上高:201億円(2016年3月期)
従業員数:201名(2016年3月期)
事業内容:機械器具総合商社
http://www.shimizu.co.jp/
[i Magazine 2016 Autumn(2016年8月)掲載]