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米国に追いつくチャンスは十分にある! ~PwCが企業のAI利用調査「2021年AI予測(日本)」を発表

PwC Japanグループは、昨年12月に実施した企業のAI利活用の状況を調査したレポート「2021年AI予測(日本)」を公表した。調査対象は、売上高500億円以上でAIを導入済み、または導入検討中の企業の部長職以上で、今回は315名から回答があった。主な調査結果を紹介しよう。

 

新型コロナがAI活用の取り組みに与えた影響

まず、新型コロナがAI活用の取り組みに与えた影響については、32%が「AIの利活用は加速した」、27%が「AI利活用は遅延した」だった。米国では52%が「加速した」、35%が「遅延した」という回答で、日米とも2極化の傾向が見られると分析している。

 

新型コロナがAI利活用の取り組みに与えた影響

 

AIの業務への導入状況(日本)

AIの導入状況は、2020年の調査よりも、全体的に進んでいる。「全社的に広範囲にAIを導入している」は5%から16%へ11ポイント上昇し、「一部の業務でのAIを導入している」は27%から43%へと16ポイント上昇した。

一方、これとは反対に、「PoC(概念検証)を実施したが本番導入に至っていない」企業は26%から8%へと18ポイントも減少しており、「(2020年は)PoCから本番への移行が進んだ1年であったことがうかがえる」と分析している。

ただし、検討レベルで終わっている(「AI導入検討中(現在未導入)」)の企業も33%と、一定数ある(2020年は36%)。

 

AIの業務への導入状況(日本 2020-2021)

 

次に、米国と比較すると、米国では58%の企業が「全社的に広範囲の業務へAI導入している」または「一部の業務でAIを導入している」のに対して、日本は43%と若干開きがあり、さらに「AI導入検討中(現在未導入)」の企業は米国が7%、日本は33%と違いが浮き彫りになっている。ただし、「(日米で)決定的な差がついている状況ではなく、日本の企業が追い付くチャンスは十分にある」と指摘している。

 

AIの業務への導入状況(日米比較)

 

AI投資に対するリターン

AI投資に対するリターンを尋ねた設問への回答は、次図のような結果だった。

 

AI投資に対するリターン

 

レポートは、“守り”と“攻め”の両方で「効果が出始めている」という。“守り”は、「より効率的な業務運営と生産性向上」「コスト削減の実現」「リスク低減」といった項目、“攻め”は「製品とサービスの革新」「より良い顧客体験の創出」「売上高の増加」といった項目である。

ただし米国と比較すると大きな違いがある。日本は“守り”が中心であるのに対して、米国のほうは“攻め”が優勢である。「不確実性がより高まることが想定される経営環境において、迅速な意思決定をするためにデータ起点での判断が重要となる中、日本企業の意識は低い」と、レポートはやや厳しく指摘している。

AIを本格導入する際の課題

AIを本格導入する際の課題は、「社員のAI利活用の推進スキル」(52%)、「データ整備」(51%)、「社員の開発/設計スキル」(42%)の順だった。トップ3の中に社員のスキルに関する項目が2つも入っていることから、レポートは「人材育成に関する課題解決は日本企業にとって急務」と指摘する。

その一方、「失敗を許容し、迅速に軌道修正する組織文化」(19%)や「経営層の理解」(17%)など、企業の風土・文化を課題とする回答も少なくない点が注目される。

 

AIを本格導入する際の課題

 

現在実施中のスキル育成や人員計画

「現在実施中のAI関連のスキル育成や従業員計画」は、「AI活用に際し新たに必要となったスキルと役割を踏まえた人員計画の策定」が1位(37%)、2位が「AIを含むアップスキリングと継続学習プログラムの導入」(25%)という結果だった。昨年の調査と1位・2位が入れ替わる結果で、これについてレポートは、「AI活用を具体的に検討し、導入する中で、AI関連のスキルアップだけでは足りず、技術スキルだけでなく、業務スキルや仮説構築力、ユースケースの企画力などのスキルや役割が必要であると認識され、その人員計画を立て始めている」と分析している。

現在実施中のスキル育成や人員計画

 

 

レポートは総括として、AIの活用をより一層加速するために、企業が2021年に取り組むべき4つの提言を行っている。

① AI活用の自走化の加速
② AIを活用した意思決定の促進
③ AI専門家と業務知見者によるリーダーシップ
④ AIガバナンスの実践

 

PwC Japanグループ「2021年AI予測(日本)」

 

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