このパートではIBM iベンダーの取り組みをまとめる。クラウドサービス、SI、ソフトウェアを提供する各ベンダーはPower VSをどのように捉え、取り組みを進めているか。事業拡大のチャンスとしてだけではなく、事業サービス化の糸口として捉えるベンダーもある。
クラウドベンダーが描く
当面のシナリオ
Power VSに取り組むIBM iベンダーは、クラウドサービスを提供中のベンダーとソフトウェアベンダーの2つに大別できる。ただし、クラウドベンダーのなかにはSIやソフトウェア開発・販売も主業とするところがある。
取材したクラウドベンダーは各社とも、Power VSに対して「大歓迎」を表明している。IBM iユーザーの多くがクラウドを本格的に検討する契機になると見ているからで、IBM iクラウド市場拡大への強い期待がある。各社とも、自社のIBM iクラウドサービスと競合する要素の多いPower VSの利用を支援するサービスを打ち出しているほどだ。
この動きの裏には、「オンプレミスで技術を培ってきたユーザーやベンダーが、個性的なPowerVS(IBM Cloud)上でシステムを構築・運用するのは相当に困難」「Power VS上で基幹システムを全面展開するには、サービスが停止した場合の対処法を含めて諸条件が整う必要があり、まだ時間がかかる」との読みがある。
IBM iクラウドベンダーが描く当面のシナリオは、ユーザーの基幹システムは自社のクラウドセンターに配置し、Power VSは開発・テスト・検証などコストメリットのあるスポット的な利用をする、というものだ。これには、WatsonなどIBM Cloudユニークなサービスの短期的な利用なども含まれる(図表1)。
将来的には、「自社でPower Systemsを保有するのは止め、IaaS部分はPower VSを利用し、ネットワークからアプリケーション保守までトータルにマネージドサービスを提供するのがクラウドベンダーの役割になるだろう」と語るベンダー担当者もいる。
ソフトウェアベンダーは
ライセンス管理と料金を検討中
ソフトウェアベンダーは、当面はPower VSユーザーの求めに応じてその都度ソフトウェアを設定し、ユーザーが増えた段階で独自の製品サーバーをPower VS上に設置してサービスを提供する、という2段構えの戦略を取るところが多いようだ(図表2)。
12月の取材時点では、Power VS上で動作確認したりパフォーマンスの検証を進めるところが多かった。
ベンダーソフトウェアの利用に関して、Part 2でPower VSとオンプレミスの違いに触れたが(「ベンダーソフトウェア」の項)、ライセンス管理の仕組みの変更とP05レベルの料金でソフトウェアを利用したいユーザーへの対応がベンダーにとっての目下の焦点である。
ライセンス管理については、マシンシリアルがインスタンスの稼働場所によって都度変わり、オンプレミスの仕組みを適用できないために変更が必要。Power VSはP10またはP30の機械グループになるため、ソフトウェア利用料の調整が必要になる。
ソフトウェアベンダーの多くはこの2つへの対処を進めている。ソフトウェアに新しいライセンス管理の仕組みを設けるところや、マシン番号による管理を廃して“紳士協定”とするベンダーもある。
料金設定では、P05レベルの特別価格を検討するところが多い。
IBM iベンダー各社の取り組み はこちら →(上)、(下)
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