ローコード開発プラットフォーム
「LANSA V14 SP2」登場
ランサ・ジャパンは2018年5月、「LANSA V14 SP2」の正式出荷を開始した。V14が2016年2月に登場してから約2年。半年間のベータ版テストを経て、きめ細かく機能確認を実施したうえでの待望のリリースである。
SP1からSP2へのマイナーバージョンアップではあるものの、SP2では大きな機能拡張が実施されており、実質的にはメジャーバージョンアップに匹敵する。LANSAの今後の方向性を体現する、注目のバージョンである。
今回、「LANSA V14 SP2」の発表とともに、米国に本社、オーストラリアに開発拠点を置くLANSA社は、同社が目指す「ローコード開発プラットフォーム」のコンセプトを明らかにした。
「LANSA社ではここ2年ほど、ローコード開発プラットフォームとして製品が備えるべき要件や機能性、方向性を議論し、それをバージョンアップ開発に反映してきました。LANSAは誕生当時から、開発生産性やスループットの向上を目標に機能強化を続けてきましたが、ソフトウェアの全ライフサイクルから見れば、開発プロセスはほんの一部にすぎません。
DevOpsという言葉が象徴するように、アプリケーションの迅速な展開を可能にするには、開発から保守・運用まで全プロセスでの改善が求められています。つまりコーディング量をできるだけ削減し、開発から運用までを統合的にサポートする。そして高度な専門スキルとプログラミング経験を有する技術者だけでなく、より広範な人たちがアプリケーション開発に貢献できる環境を整える。『ローコード開発プラットフォーム』は、LANSAのこうした製品コンセプトを体現しています」と、ランサ・ジャパンの中村哲代表取締役社長は語る。
V14では、Webアプリケーションの強化とJavaScriptのランタイムエンジン採用が大きな柱となっている。SP2でもこの方針を継承し、さらにそれらを具現化する機能拡張を実現した。
Web強化の柱になっているのは、「Googleマテリアルデザイン」への対応である。
Googleマテリアルデザインは、Googleが2014年に発表した新しいデザインガイド。PC、スマートフォン、タブレット 、スマートウォッチ、スマートグラス、車載PCなど多様化するデバイスすべてに、統一感のある使いやすいユーザーインターフェースを実現するためのルールやデザイン方法を提案する。すでにこれをサポートする多彩なフレームワークが登場している。
SP2では初めて、このGoogleマテリアルデザインをサポートするJavaScriptベースのWebアプリケーション・フレームワークやテンプレートをリリースした(図表1)。
以前からLANSAではメニューやユーザー管理、プログラム統合など、基幹システム構築に求められる強力なフレームワークを提供してきたが、SP2ではWebアプリケーション開発に向けてそれがさらに強化された。
「V14ではJavaScriptランタイムをサポートしていますが、今までWebアプリケーションをきめ細かく作り込むには、やはり画面デザインのノウハウやJavaScriptの開発スキルが必要でした。しかしSP2では、新しいフレームワークやテンプレートの搭載により、JavaScriptのスキルは一切不要で、まったくコーディングすることなく、Webアプリケーションを開発できます」(中村氏)
RPG、PHP、JavaScript、.NETなどいくつもの言語を覚える必要はない。RDMLと呼ばれるLANSAの開発言語スキルだけで基幹からWebまでのアプリケーション開発が可能となる。しかもウィザードを活用したテンプレートにより、今まで開発経験のない技術者でもWebアプリケーションを構築できるわけだ。
GitとGitHubの連携
ワンクリックでバージョン管理
これ以外にも、SP2では数多くの機能拡張が実現している。たとえば、RESTful WebサービスのAPIサポートもその1つである。
RESTとはRepresentational State Transferの略で、個々のWebサービスをリソースと見なし、WebサービスをURLによって一意に識別するサービスのこと。REST原則に則った(つまりRESTfulな)Webサービスは、IBM i上の基幹システムと各種クラウドサービスやWatson APIなどを連携するうえで必須の接続手法であり、最近注目を高めている。SP2では、RESTful WebサービスのAPIをサポートすることで、IBM iの基幹システムと外部システムの連携・水平統合をより迅速に実現することが可能になる。
また開発と運用の融合というDevOpsの観点では、GitおよびGitHubとの連携により、IBM iを含めたIT環境全体におけるバージョン管理と配布機能をワンクリックでサポートできる(図表2)。
Gitはオープンソースベースのバージョン管理ツール(正確には「分散型バージョン管理ソフトウェア」)であり、GitHubはGitを使用するエンジニアを支援するWebサービス。どちらもオープン系の世界では、バージョン管理の主流となりつつある。
IBM iでも7.3からGitがサポートされており、開発・運用に利用できる環境が整備されている。
LANSAは今まで独自のリポジトリにより、IBM iのバージョン管理やアプリケーション配布に力を入れてきたが、GitおよびGitHubと連携することで、今後はIBM iはもちろん、AWSやAzure、IBM Cloudなどのクラウドサービス、オンプレミス環境のサーバー群、データセンターサーバーなど多様な環境を対象に、ワンクリックでWebアプリケーションの配布およびバージョン管理を実行できるようになる。
さらにSP2では、オープンの世界で標準的・汎用的なビジネスルールやチェック機能などに対応できるように、リポジトリを拡張している。これにより、新たなフィールドの追加など修正頻度の高いオープン系データベースの保守・運用もサポート可能になる。
フレームワークやテンプレートの拡張によりコーディング量を削減し、GitおよびGitHubとの連携により、DevOpsを見据えてIT環境全体の開発・運用を管理する。SP2は、ローコード開発プラットフォームとして進化するLANSAのコンセプトを体現しているようだ。