中堅・中小のIBM iユーザーを
次のステージへお連れするのが使命
AS/400向け業務パッケージの保守サービスで事業をスタートさせたソルパックは、IBM i向け事業を「トータルサービス」へとグレードアップさせるのと並行して、多方面に事業領域を広げてきた。社長就任から約1年がたつ藤田洋一郎氏に、同社の現在と今後についてうかがった。
AS/400向けPACKシリーズの
保守サービスから始まる
i Magazine(以下、i Mag) 初めにソルパックをご紹介ください。
藤田 当社は、AS/400(IBM i)の草創期に「PACKシリーズ」という業務パッケージ・シリーズを企画した経歴をもつ前社長(現・代表取締役会長の藤田勉氏。藤田氏の尊父)が、1997年に日本IBMを退職して仲間6人と設立した会社です。最初はPACKシリーズの保守サービスからスタートしましたが、その後、IBM iのことなら何でもご支援するトータルサービスへとカバレッジを広げ、それと並行して、SAP、研修、運用、BPO、人材などのサービスを事業化していき、2008年からは海外への進出も始めました。現在は、6事業部の体制を敷いています(図表)。
i Mag そのなかで、とくに伸びている分野、あるいは注力している分野は何ですか。
藤田 成長の度合いが大きいのはBPO事業です。最近、ある企業のPC 2万台の入れ替えに伴うキッティンングとヘルプデスクサービスを受託しました。このお客様は、私が営業担当だったときにIBM i向けのセキュリティ製品をご購入いただいたことがきっかけとなってお付き合いが始まり、その後もNotesサーバーの5年間のフルアウトソーシングをご契約いただくなどお取引が続いてきました。今回の受注も、この分野で地道に経験とノウハウを積み上げてきたことが評価されたものと考えています。
RPA・AI・チャットボットの
適用に取り組む
藤田 またBPO事業では、BPOサービスとヘルプデスクサービスにRPAやAI・チャットボットを適用する取り組みを進めています。BPOサービスというのは請求書処理などの業務代行サービスですが、それらのRPA化とAI・チャットボット化が実現すると、サービスの単価を下げることができ、サービスの品質をより高めることが可能です。お客様へは新しい価値・メリットのご提供となり、当社にとっては強みとなります。しかし、簡単にはいきません。
i Mag というと。
藤田 たとえば請求書の処理でも、単純に自動化できるものはほとんどありません。書き間違えや抜け、訂正の書き入れ、表記の不統一などがふつうにあり、それをオペレータが判断し、処理を行っています。つまりRPA化には、自動化のための業務の整理が必要で、それには業務内容に関する知見が不可欠なのです。幸い当社にはBPOサービスを長く提供してきた経験とノウハウがあるのでポイントは掴めていますが、それでも最適なRPA化は簡単ではありません。
RPAの導入イメージとしては、オペレータたちの間に“同僚”としてデジタルレイバーを何人か入れ、オペレータとデジタルレイバーが連携して作業するような形態です。
i Mag もう一方の、AI・チャットボット化を進めているのはどのような業務ですか。
藤田 バックオフィスの電話応答サービスやヘルプデスクサービスの一部です。現在オペレータが行っている業務の一部にAI・チャットボットの仕組みを入れようと考えています。当社では、電話応答サービスのやり取りやヘルプデスクへの問い合わせ・回答内容をICD(IBM Control Desk)に蓄積して管理していますが、その情報を基にIBM Watson ExplorerやIBM Watson Assistantを使ってAI・チャットボットを開発する計画です。RPAやAI・チャットボットの適用は、当社が目指すKPO(Knowledge Process Outsourcing)への1つのステップと捉えています。
IBM i技術者の育成と
最新IT技術との融合に注力
i Mag IBM i関連はビジネスはどのような状況でしょうか。
藤田 今期はEOS(日本IBMの「保守サービス停止」)の影響もあり、例年と比べてとくに好調ですが、EOS後と、その先も見据えて取り組みを進めています。
最近、IBM iのお客様から、IBM iのコンバージョンについてお問い合わせが多くなりました。IBM iをオープン化したい、オープンシステムへ移行させたい、というお話です。そしてそこからPoCへ進むケースもありますが、実際に全面移行に踏み切ったお客様は1社もありません。最終的に、IBM iを使い続けるほうがメリットが大きいという判断に落ち着くのです。もちろんその背景には、業務アプリケーションの中身を知っている技術者がいないので作り直せない、全面的に再構築するには費用も体力も不足している、という事情もあるにあります。しかし、それよりもIBM iなのです。こうしたことからうかがえるのは、お客様企業におけるIBM i技術者の不足、運用の困難、新しい業務要件への対応困難という厳しい状況です。
i Mag それに、どう対応しているのですか。
藤田 お客様の状況や事情はさまざまですからご支援の内容はいろいろですが、どのようなお困りごとにも対応し、ワンストップでトータルなサービスをご提供するのが当社の基本スタンスです。そしてそのベースとして、IBM i技術者の育成と、クラウド・AI・RPAなどの最新IT技術とIBM iとの融合に力を注いでいます。若手社員がフリーフォームRPG(FF RPG)を使ってクラウド連携システムなどをバリバリ開発している様子を見ると、IBM iでできることはまだまだたくさんある、と勇気をもらうような感じです。
当社はAS/400(IBM i)からスタートした会社で、現在も500社を超えるIBM iのお客様とのお取引が続いています。IBM iへのコミットは私どもの成長の基盤であり、ミッションです。そしてIBM iをお使いの中堅・中小のお客様をデジタルトランスフォーメーション(DX)の世界へ向けて、次のステージへお連れするのが使命だと自覚しています。
i Mag サンフランシスコで開催された「Think 2019」(IBM主催、2月12?15日)に行ってこられたそうですね。
藤田 はい。「ハイブリッド&マルチクラウド」に対するIBMの強い意欲を感じ、非常に印象的でした。あるセッションで「Public Cloud By IBM i」への言及があり注目しましたが、IBM iとクラウドの連携、クラウド上のIBM iとオンプレミスのIBM iとの連携は、今後ますます重要になると感じています。
そして日本への帰りに、コンテンツ・マネジメント・プラットフォームの「Box」を提供しているBox社を訪問し、アーロン・レビーCEOにお会いしてきました。近くBoxビジネスを開始する予定です。
インドネシアとインドに
現地法人の設立を予定
i Mag 現在は海外事業部長も兼任しているのですね。
藤田 それとSOLPACタイランドの代表も兼任しています。
i Mag 拠点の拡大を続けていますが、今後の計画は。
藤田 2022年にインドネシア、2025年にインドに現地法人を設立する予定です。ベトナムでは現在、日系企業10社の生産管理システムの開発・運用をお手伝いしています。またタイでは銀行・生保業を中心にSAPの保守サービスなどを提供しています。各現地法人とも黒字化し、自前でやっていく体制が整いました。当社では人材育成の一環として、若手のマネージャーに現地法人の責任者を経験させ、マネジメントの力を鍛えるようにしています。
i Mag ご自身が現地に出向くこともあるのですか。
藤田 毎月、1週間はどこかの現地法人に行っています。海外へ行くと、現地のニーズがわかるだけでなく、グローバルのトレンドがヴィヴィッドに感じられるのがメリットです。そのトレンドに沿いつつ、当社独自の方向性をどこに定めるか。リーマンショック後の10年を乗り越えた今、次の10年・20年を構想すべき時期に来ていると考えています。
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藤田 洋一郎氏
1972年生まれ。大学卒業後ゼネコンを経て、2001年にソルパック入社。アウトソーシング事業部長、取締役など歴任後、2018年4月に現職。大のサッカーファンで、日本最古のシニアサッカークラブ「四十雀クラブ東京」ほか4チームに所属。ポジションはフォワード。趣味はFIFAワールドカップ決勝戦の現地観戦で、第16回フランス大会(1998年)から昨年の第21回ロシア大会(2018年)まで6大会連続で皆勤賞を続けている。
[i Magazine 2019 Spring掲載]