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11 IBM iサービス ~CLプログラムやAPIプログラミングを代替し、管理者や開発者の生産性を向上させる |新・IBM i入門ガイド[操作・運用編]

IBM iサービスの概要とその利点

IBM iサービスは、IBM i OSの運用管理やそのほかのオペレーションを効率化するために提供されるSQLビュー、プロシージャー、関数の集合体である。これらのサービスは、従来必要とされていたCLプログラムやAPIプログラミングを代替し、システム管理者や開発者の生産性を大幅に向上させる。

背景と目的

IBM iサービスの登場は、IBM iの技術者の世代交代と密接に関連している。SQLという広く普及した言語を採用することで、IBM iネイティブでない技術者も含め、システムの開発や保守が容易になる。これにより、運用自動化や効率化が進み、異機種が混在したIT環境でも追加の負荷なく対応可能となることが期待される。

主な利点

生産性の向上
CLプログラミングやAPIプログラミングを省略できるため、開発者の生産性が向上する。

即時利用可能な機能
CLコマンドやAPIでは提供されない機能を、SQLインターフェースやREST API、SOAP経由で即座に利用できる。

システムの可視化
システム標準提供のため、開発者ごとの属人性を排除し、システムの可視化が向上する。

サービスのカテゴリー

IBM iサービスは、以下のようなカテゴリーに分類される。

アプリケーション・サービス
データエリアの検索、ジョブ実行時の環境変数の検索、CLコマンド実行など。

通信サービス
OS情報取得、TCP/IP構成情報、IPインターフェース情報取得など。

Javaサービス
JVM関連の情報取得、GC情報やダンプの生成など。

ジャーナル・サービス
ジャーナル項目の表示・取得、ジャーナル属性の取得など。

ライブラリアン・サービス
ライブラリー内のオブジェクト情報の詳細取得など。

メッセージ処理サービス
ジョブログ内のメッセージ、メッセージキューの情報取得など。

プロダクト・サービス
ライセンスプログラムの有効期限チェック、警告メッセージ送出など。

PTFサービス
適用済みグループPTFレベル、最新PTFレベルの情報取得など。

セキュリティ・サービス
ユーザーID情報、オブジェクト権限検査など。

スプール・サービス
OUTQの情報、スプールファイル情報の表示など。

ストレージ・サービス
ASP関連情報、物理ディスク情報、テンポラリストレージ情報など。

システム・ヘルス・サービス
ディスク情報、テーブルサイズの監視など。

実行管理サービス
ジョブキュー情報、システム値情報、オブジェクトロック情報など。

提供されている
IBM iサービスの一覧

IBM発行の技術文書に、その時点で提供されているIBM iサービスの一覧が記載されている(図表1)。各サービスを選択することで機能の概要や利用方法を確認できる。なお、IBM iサービスの機能拡張は、最新のOSレベルだけでなくPTFの適用によっても随時提供される。

図表1 IBM iサービス一覧 https://www.ibm.com/support/pages/node/1119123

実際の利用例

たとえば、メッセージ処理サービスのREPLY_LIST_INFOビューには、現行ジョブの応答リスト項目に関する情報が含まれており、SQLインターフェースからシステム応答リストを検索表示できる(図表2)。

図表2 REPLY_LIST_INFO(REPLYLIST)ビューの参照例

従来のCLコマンドではWRKRPYLEコマンドに類似するが、SQLを使用することで表示結果をスプールファイルなどに出力することなく表形式で情報を取得できる。

IBM iサービスの進化と展望

IBM i 7.2から提供され始めたIBM iサービスは、運用管理の効率化と自動化を目指して進化を続けている。とくに、SQLを利用した管理手法は、従来のCLコマンドに比べて柔軟性と拡張性が高く、異なるプラットフォーム間での統一的な管理が可能となる。これにより、IBM i環境の管理がより簡便になり、技術者の負担を軽減することが期待される。

また、IBM iサービスは、若手技術者の育成や世代交代を支援するための重要なツールでもある。SQLという共通言語を使用することで、IBM iに精通していない技術者でも短期間で運用管理を習得できるようになり、IBM iのもつ独自性や取っ付きにくさが払拭され、新しい技術者の参入が容易になる。

IBM iサービスは、今後も新しい機能が追加され、さらに多くの運用管理機能が提供されることが期待される。

とくに、AIや機械学習を活用した運用管理の自動化が進むことで、さらに効率的なシステム管理が実現する可能性があるため、AS/400時代からの古参のシステム管理者や開発者もIBM iサービスを実運用に活かせるように、その進化に注目し積極的に活用していくことが求められる。

著者
小林 直樹氏

キンドリルジャパン株式会社
中部・西日本デリバリー・中部第一サービス

[i Magazine 2024 Winter号掲載]

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