一般的に業務システムでのデータの出力形態として、PDF出力など帳票の電子化が進んでいる。IBM i でもさまざまなソフトウェアベンダーが提供しているプリンティング・ソリューションに対してデータを連携し、電子的・物理的に出力するケースが増えている。しかし納品書などプリンタを用いて物理的に帳票を印刷する業務は依然として多く、IBM iから紙に印刷するニーズは今も根強い。
以下に、IBM i から物理的に印刷物を出力する際の印刷機能について説明する。
IBM iとプリンタの接続形式
IBM i とプリンタの接続形態の概要を図表1に示す。
LANが普及する以前は、Twinax接続と呼ばれる同軸ケーブルを用いた接続が主流であった。現在のIBM PowerはTwinax接続をサポートするアダプターが存在せず、基本的にはLAN(イーサネット)接続がメインとなる。
LAN接続のプリンタは、接続形式によって分類できる。
1つ目はTelnet5250形式と呼ばれる接続形態で、これはIBM5400プリンタ、IBM5577(互換)プリンタ(いずれも現在はリコー社製品)などのTelnet5250接続をサポートするインパクト・プリンタを直接IBM i に接続する形式である。
連続用紙のほか、各種伝票のような業界標準や各社固有の定型フォーム(複写式の帳票が多い)に印刷する際の基本形と言えるだろう。
2つ目はプリンタ・セッション形式と呼ばれる接続形態である。Telnet5250接続は当然プリンタとしてTelnet5250をサポートしていることが条件となるが、レーザー・プリンタや複合機などではTelnet5250をサポートしない機種も多い。代表例はWindows PCに接続するPCプリンタで、ESC/PやLIPSといったその他のプロトコルをサポートするプリンタである。
これらのプリンタをPCに接続し、Windowsなどから印刷可能に設定した上で、PC端末上にエミュレータソフトウェアを導入し、5250プリンタ・セッションを開始してIBM iのスプールファイルを出力する。
そのほかに複合機など比較的高機能のプリンタが備えているIPDS形式と呼ばれる接続形態も存在するが、大量印刷出力を行うような拠点ではインパクト・プリンタをTelnet5250で接続しつつ、そのほかの拠点ではPC端末にプリンタ・セッションを定義して、拠点に設置されているレーザー・プリンタで出力するといったように、2つを組み合わせたケースが多い。
IBM iからプリンタに出力する主な流れ
IBM i では、プリンタを印刷装置記述(装置カテゴリー*PRTの*DEVD)と呼ばれるオブジェクトで認識する。
図表2のようにTelnet5250やIPDSであれば、接続したプリンタそのものを印刷装置記述として認識する形となるが、5250プリンタ・セッションであれば、IBM iからはプリンタ・セッションが装置記述として認識される。プリンタ・セッションより先のPCに接続されたプリンタに関しては、IBM i からは直接見えない形態となる。
IBM iはOSの機器自動構成機能をオン(デフォルトではオンになっている) にしておくと、IBM i に接続要求のあったプリンタを自動判別し、適切な設定の印刷装置記述を自動的に作成する。印刷装置記述が作成されると、自動的にその装置記述に紐づく出力待ち行列(*OUTQ)が作成される。
作成した印刷装置記述や出力待ち行列を利用して、IBM iからプリンタに出力する基本的な流れは以下のとおりである(図表3)。
① プログラムから印刷装置ファイル (*PRTF) に対して印刷データを書き出す。印刷装置ファイルには用紙サイズその他、印刷に必要な情報が指定されている。
② 印刷データの書き出しは、スプールファイルと呼ばれる印刷データとして生成される。スプールファイルはジョブで指定された出力待ち行列で実行される。
③ プリント・ライター・ジョブ(ライター・ジョブ)と呼ばれるIBM i OSの印刷プログラムを開始すると、開始時に指定された印刷装置記述に紐づく出力待ち行列*OUTQをモニターする。出力待ち行列にスプールファイルが作成されると、ライター・ジョブがスプール出力を出力待ち行列から取り出し、プリンタに対して書き出し要求として送る。
④ ③の印刷データがプリンタから出力される。
IFS上のファイルとしてPDFやテキストを出力する
ここまで物理的な印刷出力環境について簡単にまとめたが、IBM iは、6.1以降で印刷出力をIFS上のファイルとして出力する機能も提供している。その機能は、大きく分けて2つある。
1つは、5770TS1(IBM i OSのライセンス・プログラム)によるPDFファイル出力機能である。一度スプールファイルとして出力したものをPDFファイルに変換して、IFSに保管する機能を提供する。PDF変換はIBM i OSコマンド(CPYSPLFコマンド)のほか、IBM Navigator for iやACSのGUIから実行できる(図表4)。
もう1つは、IBM iのスプールファイルをテキストファイルとしてダウンロードする機能である。これはIBM Navigator for iやACSから実行できる(図表5)。
5770TS1によるPDF出力、テキストファイルのダウンロード機能はいずれも業務用途のスプール出力 (罫線データを配置するなど) を精度高くPDFファイルとして出力するには不向きで、PDFファイルにパスワードを設定するなどの付加機能もサポートしていない。
このため、ジョブ・ログをIBMやベンダーのサポート部門に提供したい場合や、簡易な業務利用に活用するケースなどが向いている。業務用途の帳票出力を電子化したい場合には、ソフトウェアベンダーから各種ソリューションが提供されているので検討するとよいだろう。
著者
今尾 友樹氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
IBM Power テクニカルセールス
著者
佐々木 幹雄氏
日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
IBM Power テクニカルセールス
新・IBM i入門ガイド[操作・運用編]
01 IBM iの実行環境
02 IBM iのストレージ管理
03 IBM iのログ
04 IBM iのユーザー管理
05 IBM iのセキュリティ
06 IBM iの印刷機能
07 IBM iの保管/復元
08 IBM iの基本操作 [コマンド編]
09 IBM iの基本操作 [ツール編]
10 IBM iの監視 基本
11 IBM iサービス
12 IBM iのトラブルシューティング
13 操作・運用編 FAQ
[i Magazine 2024 Winter号掲載]