INSネット「ディジタル通信モード」が
2024年1月にサービス終了
日本ではインターネット登場前の1980年代にJCA手順や全銀手順が策定され、NTTによるISDN回線サービス「INSネット」も始まったために、公衆電話網を使うEDIが今でも広く使われている。しかし、そのINSネットのうちの「ディジタル通信モード」が2024年1月に終了しIP網に移行するため、INSネット上でJCA手順や全銀手順によるEDIを行っている企業とっては、インターネットEDIへの切り替えが大きな課題である。
IBM iの世界でも多数のユーザーが、INSネットを利用してJCA手順や全銀手順でEDIを行っている。このIBM iのEDIにおいては、ネオアクシスのToolbox for IBM iが広く使われている。
Toolbox for IBM iは、もともとは日本IBMがTOOLBOX/400の名称で販促的に提供していたものを、2006年にネオアクシス(当時、エス・イー・ラボ)に移管し、以後、同社が拡張・強化してきた製品である。JCA・全銀手順に対応にするEDI機能のほかに文書化やプログラム開発・運用などの支援機能があり、IBM iユーザーの間では“定番”とも言えるツールだ。
ネオアクシスではこの10年間に、Toolbox for IBM iを中核として、「Toolbox EDI サービス」や「Toolbox for JP1」など8種類のツールをIBM iユーザー向けに製品化してきた。そして同シリーズの新製品として2月にリリースしたのが、「Toolbox JXクライアント」である。
IBM iネイティブ環境で稼働する
唯一のツール
Toolbox JXクライアントは、JX手順に対応するEDIツールである。JX手順とは、インターネットを利用する通信手順で、JCA手順の後継と見なされているもの。つまりToolbox JXクライアントは、INSネット「ディジタル通信モード」サービス終了後のIBM iユーザーの受け皿となるインターネットEDIツールである。
ネオアクシスの白石昌弘氏(ソリューション事業部プロダクトサービス部長)は、Toolbox JXクライアントを開発した理由について、「Toolboxシリーズは、当社が販売したものだけでも6800ライセンス以上あり、過去の日本IBMからの販売分を含めると、まだ相当数のIBM iユーザーがINSネットを使ってEDIを行っているものと思われます。そうしたユーザーがINSネットの終了後も移行しやすいように、IBM iで広く使われているEDI機能をもつツールの提供ベンダーの責任として、Toolbox JXクライアントを開発しました」と説明する。
Toolbox JXクライアントの特徴は、5250画面を使い、Toolbox for IBM iと同様のインターフェースと操作感で、JX手順によるEDIを行うことができる点。データベースのファイルを指定すると、そのまま送信できるという操作感が継承されている。また、Db2 for iのデータのほかにバイナリにも対応しているので、IFS上の可変長データやテキスト、Excelなども送受信可能だ。
Toolbox JXクライアントは、IBM iがインターネットに接続されていれば利用可能で、インターネットの速度で送受信可能。公衆電話網を利用した従来の通信よりも大量のデータをより高速に送受信できる。また、インターネットを利用するため、公衆回線通信料が不要になる。
しかし同ツールの特徴は、何と言っても、IBM i上のネイティブ環境で稼働する唯一のJX手順対応ツールということだろう。このため、EDI専用サーバーやIBM iのPASE環境を利用するツールと比べて、管理する項目や工数が少なくて済む。IBM i上で処理や操作を完結させたいユーザーに向くツールである。
図表は、EDI専用サーバーを利用するツールとToolbox JXクライアントの対比である。EDI専用サーバーを利用するツールは、サーバーとツールの管理が必要なのが明らかだが、白石氏は「EDI専用サーバーでは、IBM iからEDI専用サーバー上のJXクライアントへの送信完了を確認する機能が一般的にないので、そこが運用管理上の問題となる可能性があります」と指摘する。
INSネット「ディジタル通信モード」サービスが終了する2024年1月までは、まだかなり時間が残っているように思われるが、通信手順の変更は、通信先との調整や通信環境の整備などクリアすべき項目が多い。「今から準備を進めても、けっして早いことはありません」と、白石氏は強調する。