連携プログラムを
プログラミングレスで実現
「Qanat 2.0」は、企業内に存在する多様なデータを抽出・加工し、他のシステムへ連携させるツールである。登場したのは2007年。当初は基幹システムからBIツールである「WebReport 2.0」へ、照会・更新・加工するためのデータを連携するETLツールとしての利用が中心であった。
しかし2015年ころからは、条件分岐やエラー判断などのフロー制御に対応し、全体の流れをドラッグ&ドロップ操作で定義する「フロー操作」や、セキュリティ面での機能強化を図った「ログ監視」といった機能を搭載。BIにとどまらず、幅広い領域でのデータ連携を実現するソリューションとして提供されるようになった。
「Qanat 2.0」は現在、図表のような機能を備えている。基本機能として、データの抽出・変換、アクセス制御、スケジュール管理に加え、フローやマッパー(関連付け)の設定といったクライアント上での定義設計、ブラウザ画面で操作するフロー操作やログ管理などがサポートされている。
またDb2 for iをはじめ、Oracle、SQL Server、My SQL、Postgre SQLなど、多彩なデータベースとの入出力を担う「DB連携アダプター」、XMLやCSVといったファイルの入出力を実行する「ファイル連携アダプター」は、いずれも標準で提供されている。
以上の基本機能だけで、IBM i上の基幹システムはもちろん、各種DBをベースに稼働する多種多様なアプリケーションをノンプログラミングで連携させることが可能になる。システム構築時やSI案件では、連携プログラムの開発に相応の工数やコストを要している。ある部分は手組みで、ある部分はツールを組み合わせて利用するなど、開発作業も複雑になりがちだ。しかし「Qanat 2.0」を使えば、開発不要で連携できるので、短期間での構築、保守性の向上、属人化の排除などが可能になる。
アウトプットとクラウド
2つの軸で新たなシナリオを描く
「Qanat 2.0」のこうした導入シナリオに昨年あたりから、変化が見え始めている。一言で表現するなら、単なる「つなぐ」ではなく、「付加価値を高めてつなぐ」への変化である。その柱は大きく2つあると、JBアドバンスト・テクノロジーで「Qanat 2.0」を担当する土井満氏(マーケティング サービスビジネスグループ)は次のように指摘する。
「1つ目はPDFの作成やメール送信、Excelへの出力など、単に連携するのではなく、アウトプットとしての活用を見据えて導入するケース。もう1つが、クラウドの本格展開に伴って、クラウドとオンプレミス環境を連携させるために、『Qanat 2.0』を使いたいというケースです」
アウトプット系のオプション製品として提供されているのは、Excelファイルとの入出力をサポートする「Excel連携アダプター」、WebReport 2.0からの入力を司る「WebReport連携アダプター」、さらにデータをメールに自動出力する「メール連携アダプター」、そしてPDFを生成する「PDF作成アダプター」である。
「Qanat 2.0」は帳票出力関連の機能を内蔵しており、最近では単純なデータ連携ではなく、こうしたアウトプットマネジメントを目的に導入するケースが増えているという。
またクラウド系のオプション製品としては、クラウドベースのCRM、顧客管理、SFA/営業支援ソリューションと連携させる「Salesforce連携アダプター」、クラウド型の業務アプリケーション構築サービスと連携する「kintone連携アダプター」、Amazon S3環境にあるCSVファイルと連携する「Amazon S3連携アダプター」、そして企業内の帳票類をFAX送信やファイル送信など、ニーズに応じた形式で配信するコクヨのクラウドサービスを対象にした「@Tovas連携アダプター」がある。
いずれのアダプターも好調だが、最近とくに注目を集めるのが、「kintone連携アダプター」である。kintoneを使ってアプリケーション構築を手掛けるベンダーは急速に増えており、連携プログラムを短期間で開発しようと、一種のSIツールとしての利用が活発化しているようだ。
「kintoneでSIビジネスを展開するパートナーの方々への訴求が進み、よい形でのアライアンスモデルが形成され、それが販売の推進力となっています。ほかのアダプターについても、パートナーシップの重要性を感じています」(土井氏)
最近は、「Qanat 2.0」をオンプレミス環境ではなく、JBグループのクラウドサービスである「俺のクラウド」上で運用するケースも増えてきた。現在は導入案件の半数以上で、「俺のクラウド」が採用されるという。
「オンプレミスとクラウドのハイブリッド連携では、どういう経路でデータをつなぐかという課題に、今までとは異なるスキルが求められます。障害設計やネットワーク運用などに、クラウドならではの制約やセキュリティ対応を考慮する必要もあります。連携時のリスクを軽減するためにも、『Qanat 2.0』のようなツールが求められています」
同社では増大するクラウドニーズに対応するため、今年は新しいアダプター製品の発売を予定している。多彩なアダプターラインナップが、「付加価値を高めてつなぐ」というシナリオを具現化していくことになりそうだ。