鈴木明一氏
ベル・データ株式会社 東日本営業本部 取締役本部長
vs
鎌田悟氏
ジーアールソリューションズ株式会社 代表取締役社長
「Fresche View」や「Fresche Advisor」を軸にタッグを組み、モダナイゼーションに向けたエコシステム形成に力を入れるベル・データとジーアールソリューション。安易なオープン化に潜む危険性を指摘し、現行資産の可視化・分析の重要性を強調しつつ、真のモダナイズとは何かを語る。
安易なオープン化には
茨の道が待っている
鈴木 モダナイゼーションという言葉には、何か新しいことにドラスティックに取り組む、あるいはオープン系へ移行して一新するイメージがありますが、IBM iの世界では常に改良・改修への努力を続けてきました。現在の業務課題やビジネスモデルに適合させたり、税法や法律など企業を取り巻く環境の変化に対応したり、事業の拡大や新しい領域への進出をサポートするなど、理由はさまざまです。大規模な改修から軽微な変更までいろいろですが、新しいテクノロジーを取り入れながら、業務と寄り添ってシステムを進化させてきました。
鎌田 そうですね。当社はこれまでオープン系の開発がメインで、IBM i資産の可視化・分析ツールである「X-Analysis」の国内販売を機に、IBM iのお客様やパートナー様とのお付き合いが始まりました。いかに多くのユーザーが今もIBM i上で重要な業務システムを運用しているかにあらためて気づかされます。その一方、最近はIBM iからオープン系へ移行途中のお客様から、SOSに近いご相談が寄せられています。RPGプログラムを自動コンバータでJavaプログラムへ変換し、一部を手作りするなど万全の体制を敷いたにもかかわらず、プロジェクトが進むにつれ、旧システムの機能すら踏襲できず、今まで問題なかった周辺システムとの連携も難しいことが判明した。その結果、赤字プロジェクトとなるのは確実で、このままではプロジェクト継続が危ぶまれる。いずれも大手ですが、悲鳴に似たご相談が何件か寄せられています。
鈴木 当社がお付き合いしているのは中堅・中小のお客様が多いのですが、社長から「いつまでこんな古くさいオフコンを使っているんだ、何とかしろ」と命じられ、オープン化に向けたベンダー探しや見積依頼に着手するご担当者は結構おられます。でも算出された工数やコストが予想をはるかに超え、高額な見積に社長が驚いてオープン化は白紙になる。その代わりに既存の資産を大切にしつつ、モダナイゼーションのような刷新や改革をどう進めていくかというシナリオに切り替わるケースがよくあります。「見た感じが古い」とか「オフコンは時代遅れ」など、少々乱暴な理由で脱IBM iに着手すると、大抵はうまくいきません。
鎌田 そのとおりです。難航しているプロジェクトでは共通して、最初の段階で現状を正確に分析しきれないままオープン化に着手したことが原因であるように思います。RPGからJavaへコンバートしているケースなどでは、最初にバラ色の構想を描きすぎている、または楽観的な初期段階の分析になっているという印象が拭えません。オープンなOSやハードウェア上でアプリケーションをJavaベースにすれば、問題はすべて解決し、明るい未来が待っていると、オープン系ベンダーがIBM iをよく知らないまま提案している可能性もあります。しかし最新の言語で開発されたアプリケーションであることと、業務上の価値が高まることは別です。たとえオープン化しても、ビジネス上の価値が何も変わらないのであれば、何のために着手するのか。ITとビジネスの両輪で、議論する必要があります。
鈴木 IBM iをなくすこと、Javaに変えることだけが目的になっている印象がありますね。それにオープンという言葉はとても身近で、世の中に溢れているので、オープン化はとても簡単なことだと思われるのかもしれません。Java化するのは、Javaという言語の可搬性、つまりどのプラットフォームでも動くことを重視した判断なのでしょうが、オープン化の狙いはそれだけなのか、IT基盤に対するコンセプトをどう描くのかを突き詰めて考えねばなりません。大きなリスクとコストを覚悟して臨む必然性が本当にあるのかどうか、真剣に検討する必要があります。
タッグを組みエコシステム形成
IBM i市場への攻勢を強める
鎌田 オープン化にしろ、モダナイゼーションにしろ、現状を正確に認識するには資産を可視化・分析することが何より重要だと思います。難航しているオープン化プロジェクトの例でも、IT担当者や業務担当者、経営層も含めて皆、最初のステップで可視化を試みているのですが、実際には正確に可視化しきれていません。人海戦術や簡易ドキュメント作成ツールを使って一定レベルの文書化をしても、ちゃんと向き合っているのはプログラムを開発した本人ぐらいで、多くの人は真剣には見ていないし、通常の方法では業務と関連づけて認識するのは難しいのです。あるプロジェクトで、お客様のプログラム資産をお預かりし、「X-Analysis Suite」でリアルタイムな可視化と傾向分析のデモを実施したところ、担当者から、今現実に動いているシステムの全体像を初めて理解できたと言われました。そうした経験を重ねていくと、過去の資産に対する知識共有の難しさを感じます。可視化・分析して共有することのレベルや充足度をもっと高めていかないと、モダナイゼーションにしてもオープン化にしても、うまく行かないと強く思います。
鈴木 それはツールの機能に依存する部分が大きいですね。ソースレベルとオブジェクトレベルの双方で資産を分析できる「X-Analysis Suite」だから可能なのでしょう。当社では4~5年ほど前から、ハードウェア保守だけでなく、プログラムの改修やメンテナンスを含めたアプリケーション保守を依頼されるケースが増えてきました。他ベンダーが開発したプログラムをきちんと保守するには、可視化・分析ツールが不可欠ですから、いろいろなツールを研究しました。そして「X-Analysis」はアプリケーション構造の可視化・分析レベルが非常に高いと評価し、採用を決めました。当社にはインフラの運用管理からアプリケーションの開発・保守まで、お客様のご要望にワンストップサービスでお応えしたいという強い思いがあり、それを実現すべく専門部隊も発足させています。そうしたビジネス展開に、「X-Analysis Suite」は必須のツールであると考えています。
鎌田 2017年10月からベル・データ様とパートナー契約を締結し、本格的な協業がスタートしましたね。当社は日本での正規販売代理店として、開発元であるカナダのFresche Solutions社と密に連携し、国内のお客様やビジネスパートナー様の要望を正確に伝え、製品に反映させるともに、技術情報や実装ノウハウを国内に伝達する役割を担っています。
鈴木 当社では2017年12月から今年3月まで、「X-Analysis Suite」のモジュールの1つで、安価にRPGやCOBOL、CLなどのプログラム資産を可視化・分析するツール「Fresche View」の販売キャンペーンを展開しています。IBM iユーザーの皆様にご案内していますが、とくに自社で開発・保守を担うお客様からの反響が大きいです。現状がよくわからないとアンタッチャブルな領域が増え、改革の手を付けづらいのですが、資産を可視化し、現状を正確に認識できると、課題や問題点が明確になり、今後に向けて動き出すトリガーになるようです。あるお客様では、可視化・分析ツールの導入により親会社との意思疎通が進み、プロジェクトが動き出すきっかけになりました。
鎌田 Fresche Solutions社は全世界2万2000社のIBM iユーザーへサービスを提供しており、IBM iのモダナイゼーションに向けたコンサルティングサービス「Discovery Service」を展開しています。このノウハウをベースに、当社でも今年、国内で同様のサービスを提供していく計画です。ベル・データ様のIBM iに関するノウハウと販売力、それに当社のオープン系スキルやFresche Solutions社と連携した情報発信力のシナジー効果で、IBM i市場への展開を図っていきたいですね。
鈴木 同感です。「Discovery Service」によるコンサルティングサービスを上流工程と位置づけるなら、実装を担うそのあとの工程を当社で引き継ぐことも可能でしょう。現在のIT市場では、1社だけではお客様のニーズに対応できません。エコシステムによる協業や連携が不可欠です。両社が強力なタッグを組み、インフラ面から、そしてアプリケーション面からも、IBM iのお客様を長くお守りしていければと願っています。
【i Magazine 2018 Spring(2018年2月)掲載】