1951年に国産初のトルクレンチを製品化して以降、自動車整備に欠かせないツールとしてトルク製品を国内外に広く普及させてきた。現在はコンピュータや通信、建築、医療など多様な産業領域で活躍する一方、トルク分野における世界のリーディングカンパニーを目指し、海外市場への進出が加速している。
エンドユーザーが自在に
データを活用できるように
東日製作所はシステム/34時代から、RPGで開発した基幹システムを運用している。販売管理、生産管理を軸に原価計算から外注管理まで、ほぼすべての基幹業務がIBM i上で稼働する。システム/34時代に開発したプログラムに改修を重ねながら、現在に至っている。
同社のシステム運用を担うのは、技術部 ISグループの金田直樹グループ長と女性スタッフの合計2名である。PC端末やネットワークなどインフラ管理からプログラムの改修、日々寄せられる問い合わせまで、さまざまな業務に対応している。
こうした運用管理業務を効率化し、限られたシステム人員を本来の業務に集中させるべく、同社では2013年からクラウドの利用を開始した。メールサーバーをSaaS型へ移行したり、VMwareの仮想環境へアプリケーションを移行するなど、段階的なクラウド化のシナリオを策定。2015年にはそれまで本社に設置していたPower SystemsおよびIBM iの環境を、インターネットイニシアティブ(IIJ)がIBM iのクラウドサービスとして提供する「IIJ GIO Power-iサービス」へ移行した。現在、本社では全サーバーが撤去され、完全クラウド化が実現している。
さらに2016年4月からは、新しいBIツールとして、「PHPQUERY」(オムニサイエンス)の利用をスタートさせた。
同社ではそれまで、PC端末にACS(IBM i Access Client Solutions)を導入し、Query/400を使いながら基幹データの活用を進めてきた。各部門で合計30〜40名が販売データや受注データを分析するなど活用機会は多かったが、エンドユーザーが自由に活用するレベルにはなく、何らかの変更が生じた場合はすべて、ISグループに変更依頼が寄せられていた。
「もっとエンドユーザーが自由に活用し、基幹データの利用レベルを高めると同時に、ISグループの負荷を軽減できるツールがないかと、ずっと探していました」と、金田氏は当時を振り返る。
Query/400の後継製品となる「Web Query」(IBM)も導入した。しかし当時、IIJ GIO Power-iサービスで契約していたシステム環境では、Web Queryが必要とするCPWを満たしていなかったせいか、レスポンスが遅かった。また機能の多彩さが操作の複雑性につながっていたため、結局エンドユーザーに広く運用を拡大するまでには至らなかった。
継続的にツールを探すなか、2016年2月に参加したセミナーで、金田氏は「PHPQUERY」の存在を知る。
「PHPQUERYであれば、データ分析に関する当社の要件をすべてクリアできると考えました。クエリー実行前後にCLを呼び出せるので、RPGプログラムと連結することも可能です。また操作がわかりやすくシンプルで、ブラウザでも利用でき、エンドユーザー側の自由度が高い点も魅力でした」(金田氏)
「PHPQUERY」では、システム管理者があらかじめ設定した項目については、ユーザー側で値を指定して実行できる。ユーザー自身が任意の条件を指定して、必要な情報をピンポイントに抽出することも可能だ。さらに抽出した結果は、昇順・降順、キーワードによる絞り込み、列の非表示・移動など、ユーザー側で自由に編集でき、次回のログイン時にもその設定を残せる。
つまり汎用性の高いクエリー定義を作成しておけば、ISグループの手を借りずとも、エンドユーザー側で抽出条件などを自在に変更して活用できるわけだ。
ヨーロッパ法人でも
「PHPQUERY」の利用を開始
同社ではすぐに「PHPQUERY」の導入を決め、2016年春から社内への展開を開始した。当初はISグループで10種ぐらいのクエリーを定義し、要望に応じて段階的に増やしていった。現在は、約30種のクエリーが利用されている。
日々の実行結果は、CSVファイルに出力してメールに添付し、経営陣や担当者へ自動配信する。
また同社では米国、ヨーロッパ、中国のそれぞれに海外拠点を置いているが、このうち本社のIBM iを利用するヨーロッパの現地法人(在ベルギー)でも、「PHPQUERY」の利用がスタートした。
「現地スタッフは英語で操作します。PHPQUERYのメニューは英語で表示できますが、クエリーの抽出条件などは英語に翻訳されないので、日本語と並んで英語を併記しておくよう工夫することで、ベルギーでもPHPQUERYによるデータ活用が実現しました」(金田氏)
エンドユーザーのデータ活用レベルを向上させる一方、ISグループに寄せられる日々の依頼や問い合わせは、確実に減少している。
図表2 PHPQUERYの画面
今後はクエリー定義に対してグラフを設定し、リアルタイムにグラフデータを照会していく予定だ。また営業担当者全員に配布しているタブレットなどのモバイル端末でも、データ照会を可能にするよう検討している。
日々の運用管理業務の軽減により、本来の業務に注力できるようになったISグループでは現在、RPA(Robotic Process Automation)の構築に取り組んでいる。海外の取引先からのメールに添付された受注データを、IBM iの基幹データで自動的に受注処理する仕組みが、2018年11月までに動き出す予定である。
同社では今後もさまざまな工夫により、基幹データの活用領域を広げていく方針である。
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COMPANY PROFILE
株式会社東日製作所
本社:東京都大田区
設立:1949年
資本金:3億1000万円
売上高:61億円
従業員数:130名
事業内容:手動式・動力式トルク機器、および機械式・電力式トルク計測機器の製造・販売
https://www.tohnichi.co.jp/
[i Magazine 2018 Autumn(2018年8月)掲載]