日本IBMは4月6日、金融業界向け「オープン・ソーシング戦略フレームワーク」に、6つ目のタスクとなる「データ利活用サービス」を追加した、と発表した。
金融業界向け「オープン・ソーシング戦略フレームワーク」とは、金融機関のデジタル変革に必要となる各種タスクを定義してフレームワーク化したもので、従来は次の5つのタスクで構成されていた。
・フロントサービス
・デジタルサービス
・ビジネスサービス
・金融サービス向けパブリッククラウド
・新しい働き方の実践と人材育成・コミュニティ
今回はこれに、6つ目のタスクとして「データ利活用サービス」を追加したもので、データの収集・分析・活用・販売などデータの活用に関する一連のプロセスを提供し、金融機関の競争力向上を支援する。具体的には、「データ収集、データ処理やデータ分析のレベルアップ、データ利活用ユースケースのナレッジ提供や実行自動化、加工データの外部提供・販売など」のサービスを提供するという。
日本IBMは2018年8月に、10の業界を対象とする「デジタル時代の次世代アーキテクチャー」を発表して以降、金融業界向けクラウドソリューションの構築に取り組んできた。以下がその経緯で、関連する米IBMの動きも含めた。
・2018年8月 「デジタル時代の次世代アーキテクチャー」策定を発表。銀行、保険、製造、石油・化学、小売、運輸、公共、電力・ガス、通信、ヘルスケアの10業界が対象
・2019年11月 米IBM、Bank of Americaと共同で「金融サービス向けパブリッククラウド」の構築をスタート。金融業界向けパブリッククラウドサービス構築の取り組みとしては世界初
・2020年6月 金融業界向け「オープン・ソーシング戦略フレームワーク」を発表。金融企業のデジタル変革推進のための5つのタスクで構成される包括的なフレームワーク
・2020年6月 金融業界向け「IBM Digital Services Platform for Financial Services(DSP)」を発表。「オープン・ソーシング戦略フレームワーク」のコアのタスクであるデジタルサービス層の中核ソリューション。
・2021年4月 金融業界向け「オープン・ソーシング戦略フレームワーク」の6つ目のタスクとして「データ利活用サービス」を追加
・2021年4月 米IBM、金融機関向けクラウドサービス「IBM Cloud for Financial Services」の一般提供を開始
IBMはメインフレーム時代から主要業種に的を絞った業界別のソリューション・フレームワークを提供してきた。2018年8月から始まる取り組みは、そのクラウド版と言えるもので、上図のように着々と整備を進めている。
クラウド版の特徴は、Kubernetes/OpenShiftを基盤に採用するなどオープンソース・ベースであることで、これに近年の技術的成果やアセットを加えて、先進的かつ包括的なフレームワークにしている。ただし今回の「データ利活用サービス」の追加は、フレームワークとして“進化中”であることもうかがわせる。今後、金融業界向けフレームワークの進展とともに、他の業界向けフレームワーク(未発表)も注目されるところだ。
金融業界向け「オープン・ソーシング戦略フレームワーク」は現在、メガバンクや地銀など20社が利用中。同フレームワークの中核ソリューションである「DSP基盤」は、3月末にIBM Cloud上で提供開始された。6月には開発ポータルやCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)環境を提供予定という。また「フロントサービス」に特化したセンターが、3月に中国・大連に設置された。
ニュースリリース「金融サービス向け「オープン・ソーシング戦略フレームワーク」に「データ利活用サービス」を追加」
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