協立電業はエレクトロニクス産業の発展ととも成長してきた商社である。国内に本社を含めて7拠点と2つの物流センター、そして香港に拠点をもち、取引先には国内有数のメーカーが名前を連ねる。提案営業、技術力、品質管理、物流力が強みで、最近はアフターフォローにも力を入れ高い評価を得ている。
従来は、紙やExcelに出力して
業務部門へ配布する運用
エレクトロニクス産業は、戦後の日本経済の成長を支えてきた原動力の1つである。近年は韓国・台湾・中国企業の進出により苦戦を強いられているが、それでも12兆円規模(2017年)の一大産業であることに変わりはない。
戦後まもない1951年設立の協立電業は、日本のエレクトロニクス産業の発展とともに歩んできた電子部品・電子機器の総合商社である。現在は、全国に7つの拠点と2つの物流センターをもち、香港にも拠点を構える。そして最近は販売だけでなくソリューション・プロバイダーとしての色彩も強め、さらに「専門部署を設け、アフターケアにも力を入れています」と、総務部システム課係長の阪本崇徳氏は話す。
そうしたソリューション色、サポート色が強まるにつれて徐々に高まってきたのが、各種データをさまざまな切り口で捉え、分析やデータの整理を行って業務に活かす動きである。
従来は、業務部門からシステム課へデータや資料の依頼があると、システム課でデータベースを照会し、紙やExcelに出力して配布する運用を行ってきた。ユーザーのなかには5250画面を操作して自ら資料を作成する社員もいたが、少数にとどまっていた。
システム課の大きなミッションは、会社全体の業務効率化とコスト削減である。以前より、IBM i上の基幹システムの開発・保守を中心に、メールやグループウェアなどをクラウドサービスに切り替え、システム課の運用業務を効率化させてきた。また、帳票出力を紙からPDFへ切り替えたり、仕入先への注文をFAXからメールへ変更したり、得意先からExcelで発注があった場合、そのまま基幹システムに取り込める仕組みを構築するなど、「できる部分から」(阪本氏)、効率化に取り組んできた。
そうしたなかで懸案の課題としてきたのが、社員による業務データの活用である。具体的に動き出したのは、受注入力担当者から「5250画面を2画面同時に使いたい」という要望が寄せられたことがきっかけだった。
「受注入力の最中にお客様から問い合わせがあると別画面に切り替えなければならないので、2画面使えれば業務がスムーズに進む、という要望でした。このときは排他制御の問題やセキュリティの懸念があり実現しませんでしたが、システム課の課題となりました」と、阪本氏は振り返る。2010年ごろの話である。
阪本氏はその後、既存の5250の照会画面をPHPで開発した。しかし「RPGで開発しながらPHPのスキルを習得するのに限界を感じ、市販のBIツールを探しました」と語る。IBMのWebQueryもその当時試したが、「検索結果を表示するレスポンスがあまりよくなく、コストも合わなかったため見送りました」という。
利用率を8割から9割へ
引き上げる方策
2014年に現在のPower 720 Express(IBM i 7.1)へ切り替えた際に、ベンダーからオムニサイエンスの「PHPQUERY」を紹介された。
「そのころのPHPQUERYは発売直後で機能もかなりシンプルでしたが、システム課が想定していたのも在庫照会程度の軽いシステムだったので、これなら使いこなせそうだと思い、テスト導入しました。試しに作成したクエリー定義の結果(画面)もユーザーから好反応が得られたので、採用したいと思いました」(阪本氏)
ただしテスト導入中に、「検索条件の仕様などで使いづらい点が多々あった」(阪本氏)からである。しかし、それらをオムニサイエンスに伝えると、即座に修正され、次々に改訂版が提示された。「こうした対応をしてくれるのならば今後も使い続けていけると考え、上司にかけ合い採用を決めました」と阪本氏は述べる。
2014年5月に検討を開始し、6月初めにテスト導入。6月末には採用を決め、クエリー定義の作成に取りかかった。
「できるだけ多くのユーザーに使ってもらいたいと考え、ユーザーが頻繁に使用している照会を細かく調査し、それをPHPQUERYのクエリー定義に落としていきました。現在も変わらず、この作業を継続しています」(阪本氏)
2014年10月にユーザーに公開しPHPQUERYの本格利用が始まった。そのときのクエリー定義数は3本。4年後の現在は57本へと増加している。現在、全社員の約80%が利用中で、月間約3000件のクエリー実行がある。PHPQUERYの導入から1年当時の「全社員の30%程度」と比べると、飛躍的な増加である。
総務部システム課の加藤英明氏は、「照会結果をExcelにダウンロードできるPHPQUERYの機能が好評で、頻繁に使われています。Excelの資料は、従来はシステム課が依頼を受けてユーザーへ送付していましたが、PHPQUERYの導入後はその依頼がなくなり、これまでの月40?50件の依頼が10件程度に減りました。ユーザーからは、これまで2時間かかっていた納期回答が、Excelに落として送付すればよいので10分で済むようになった、という評価の言葉をもらっています」と、利用状況を説明する。
システム課では今後、照会結果のグラフ化や、明細画面から別の照会画面へと飛ぶリンクの設定などの対応を進める計画。
阪本氏は、「現在の80%の利用を90%へ引き上げたいと思っています。そのためにはユーザーの要望に沿うクエリー定義と、手を伸ばしやすい環境が不可欠です。グラフ化によって経営層の利用も期待しています」と、抱負を語る。月初に紙で配布している業績データを、PHPQUERYを使ってExcelへ落としメールで自動配布する仕組みも検討中という。
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COMPANY PROFILE
協立電業株式会社
本 社:東京都立川市
設 立:1951年
資本金:1億5000万円
従業員数:84名
事業内容:電子部品・電気機器の販売
https://www.kyo-d.co.jp/
[i Magazine 2018 Winter(2018年11月)掲載]