COMPANY PROFILE
本 社:愛知県豊橋市
創業:1931年
設立:1954年
資本金:4億3800万円(資本剰余金を含む)
売上高:351億円
従業員数:207名(2019年3月末)
事業内容:鶏、豚、牛、うずらなどに向けた配合飼料の製造・販売
http://toyohashi-shiryo.co.jp/
配合飼料の生産、家畜の育成・供給、畜産食品の加工販売の各分野で、「国内畜産の未来をひらき、食卓に信頼をお届けする」を経営理念に事業展開するマルトグループ。豊橋飼料は、総合畜産食品企業群である同グループの中核企業である。全国の農家や農場に密着し、現場の声に耳を傾けながら、鶏・豚・牛・うずらなどの餌として、複数の飼料原料や飼料添加物を最適な栄養バランスで配合・加工した飼料を提供している。
A-VXからIBM iへ
COBOLをストレートコンバージョン
豊橋飼料は本社にNEC製のメインフレームであるACOS2を導入し、COBOLで開発した販売管理や仕入管理などの本社系基幹システムを長く運用している。
その一方、千葉工場と姫路工場、および九州支店には合計3台のNEC製オフコンを導入。両工場ではCOBOLで開発した生産管理システムや販売管理システムを運用し、それぞれの製造特性を反映しながらカスタマイズしてきた。また製造工場をもたない九州支店では、やはりCOBOLで開発した販売管理システムを運用。直近では3拠点ともNECのExpress5800/600シリーズを導入し、基幹システム用ミドルウェア「A-VX」を利用して、オフコン上で開発したCOBOL資産を継承していた。
しかしNECは2013年にExpress5800/600シリーズおよびA-VXの販売停止を発表し、製品販売は2015年1月に、保守用部品のサポートは2020年3月に停止することを通知した。前述した3拠点でA-VXによりCOBOLプログラムを運用する同社では、この発表を受け、急きょ対策を急ぐことになった。
発表からほどなく、まずは九州支店で運用するA-VX上のCOBOLプログラムを、本社のACOS2上へストレートコンバージョンすることを決めた。メインフレームとオフコンという違いはあるものの、同じメーカー間のCOBOLコンバージョンであれば親和性が高く、自社要員だけで移行作業が可能ではないかと判断したからだ。
しかし結果的にコンバージョン作業は難航し、途中から外部ベンダーの支援を得るなど、想定外の費用が発生することになった。当初の予想をはるかに超えた4年の歳月を費やして、2017年春に移行作業を完了したが、この経験は同社のその後の計画に大きな影響を与えることになった。
「移行作業を開始した当初は、九州支店を皮切りに、千葉工場と姫路工場のCOBOL資産も順次、メインフレームへ統合する計画でした。しかし九州支店での移行が予想に反して難航したこと、さらにメインフレームの将来性も勘案したことで、当初計画を変更することになりました」と語るのは、システム部門を統括する総合企画部の鈴木基司ゼネラルマネージャーである。
同社の基幹システムは長年にわたり、独自要件をきめ細かく反映してきたので、完成度が高く、今さらパッケージ製品を採用しても、今までと同じレベルで現場ニーズに対応できるとは考えにくい。また限られたシステム人員では、システムの抜本的な変更に伴うエンドユーザーの混乱や本稼働後のトラブルシューティングに対応するのは難しいと予想された。
「そこで現行のCOBOL資産をメインフレーム以外の環境へストレートコンバージョンすることを起点に、今後の選択肢を探り始めました。さらに自社要員のみでの対応が難しく、外部ベンダーの手を借りるならば、今後長くきちんとサポートしてくれる、信頼できるパートナーを見つけたいと考えました」(鈴木氏)
こうしてパートナー探しを続けるなか、2017年6月にJBCCのモダナイゼーションセミナーに参加し、同種の環境からPower SystemsとIBM iへのCOBOLコンバージョンに成功した企業の事例を知る。これをきっかけに、JBCCから移行提案を受けることになった。またA-VX時代から導入に携わっていた既知のベンダーからは、クラウドサービスのWindows環境へCOBOLコンバージョンを実施する案が提示された。
両者の提案を比較した結果、IBM iの安定性や信頼性、そしてマイグレーション経験が豊富なJBCCへの信頼感が決め手となって、IBM iへの移行提案を採用することになった。2017年秋のことである。
千葉・姫路の2工場で
コンバージョンを完了
移行プロジェクトがキックオフしたのは2017年11月。千葉・姫路の2工場を対象に、合計1000本あったCOBOLプログラムを精査し、必要本数を800本にまで絞り込んだ。そして「Power Systems S814」を本社に導入するとともに、JBCCとともに機能設計、量産設計、ツール開発をスタート。その間、電算システム室では1工場に付き30本のテストシナリオを作成し、約2カ月間のパイロット作業が始まった。
そして3月からは量産(コンバージョン)作業を開始。6〜7月に単体テスト、9〜10月に総合テストを実施した。これと並行して、生産ラインのFAシステムと連携させるインターフェースプログラムの開発や、メインフレームとの通信設定、エンドユーザーのトレーニングなどを進め、Power Systems S814をデータセンターに移設するなどして、2018年11月に無事に本稼働を迎えている。
「NEC時代のシステムとメニュー設計を同一にし、できるだけ操作感が変わらないように努めました。そのため本稼働後も、エンドユーザーには違和感なく受け入れられたようです。プロジェクト期間中、なにか思わぬトラブルが発生するのではないかと常に緊張し、気を抜かないようにしていたのですが、プロジェクトはとてもスムーズに進行し、拍子抜けするぐらい予想外の事態は何も起きず、無事に終了しました(笑)」と、千葉工場をメインに担当した総合企画部 電算システム室の石原利浩次長は振り返る。
現在、電算システム室では2019年度の計画として、消費税への対応に加え、メインフレーム上で稼働する買掛管理システムのオープン系環境への移行を予定している。そしてその先には、メインフレーム環境の刷新という大きな課題が横たわっている。
「今回のA-VXからIBM iへの移行も、当社が描く将来的なIT基盤の青写真を見据えてのことです。標準技術を軸に、変化にスピーディに対応できる環境を整備していきたい。たとえば生産管理など独自要件をきめ細かく反映するシステムについては基幹系システムとして残し、機能が標準化されたそれ以外のシステムはクラウドサービスを含めたオープン系環境へ移行します。これから、その棲み分けと環境整備に取り組んでいくつもりです」(鈴木氏)
Power SystemsとIBM iの導入により、同社は将来のIT環境整備に向けた大きな一歩を踏み出したようだ。
[IS magazine No.25(2019年7月)掲載]