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事例|株式会社トーコー ~今後も長くIBM iを使い続けるために、「Powerクラウドサービス」を選択

 

 

福岡情報ビジネスセンターの
クラウドサービスへ移行

 トーコーがAS/400を導入したのは1989年。それ以来、きめ細かな改修を重ねながらRPGで構築した販売管理システムを利用し続けている。

 導入して以来ずっと、本社内にサーバーを設置してきたが、2013年4月からは福岡情報ビジネスセンター(以下、FBI)の提供する「Powerクラウドサービス」を利用している。同サービスは単なるサーバー環境の提供にとどまらず、IBM iのアプリケーション開発・保守から運用支援までのトータルサポートを特徴としている。

 現在、システム管理を担当しているトーコーの佐藤淳哉主任(管理部情報システム課)は、システムエンジニアとして別会社に勤務したのち、2012年10月に同社に入社した。ちょうどクラウドサービスへの移行検討がスタートしていたタイミングである。それまでは佐藤氏の前任者に当たる情報システム課の担当者が、サーバー管理やアプリケーション保守を担っていた。

「前任者はIBM iの運用歴が長く、独学ではありますが、RPGの開発スキルを備えていたので、日常的なアプリケーション改修は自身の手で行い、比較的規模の大きい開発は外部に委託していました。ただその担当者は別部署への異動が決まり、今までのサーバー管理業務やアプリケーション保守を誰が担当するのか、長年の運用でブラックボックス化したプログラム構造などをどのように理解し、今後に向けて継承していくかという課題に直面していました」と、佐藤氏は当時を振り返る。

 COBOLやPHPでの開発経験がある佐藤氏であれば、RPGを学習し、開発を引き継ぐことは可能であったろう。しかし今後も繰り返して発生する担当者の異動や世代交代のたびに、同様の問題に直面するであろうことは容易に想像がつく。

「業務システムとしては機能要件を十分に満たしており、IBM iの利用を中止して別サーバーへ移行することは、まったく考えられませんでした。今後も長く大切にIBM iを使い続けるには、IBM iに詳しい外部の専門ベンダーへ、サーバー管理やアプリケーション保守の一切を委託したほうがよい、との経営判断に至りました」(佐藤氏)

 同社では当時、Power 720を利用していたが、IaaSサービスとして、2013年4月から「Powerクラウドサービス」の利用を開始。その数カ月後にはIAサーバーも、FBIのクラウドサービスで運用することになり、社内に保有するのはファイルサーバーのみとなった。移行と同時に、クラウドセンターと同社の間をインターネットVPNで接続している。

 クラウド移行後は、サーバー管理業務から解放され、安定したシステムの利用が可能になった。またアプリケーション保守・改修は、全面的にFBIへ委託している。

「移行前はマンパワー不足で改修に着手できない案件が多数あったのですが、クラウドに移行してから数年間で、FBIの手を借りながらバックログとなっていた開発案件をすべて処理しました。今は大きな改修もなく、安定的な運用を続けています」と語る佐藤氏は、日常的な運用管理業務が自身の手を離れ、よりシステム企画中心の業務に携われるようになったという。

 

新センターへ移設し
POWER9搭載マシンの利用を開始

 FBIは今年、九州電力の100%子会社であるQTnetが博多駅近くに開設した「QICデータセンター博多駅」へ、Powerクラウドセンターを移設してサービスを開始した。

 旧クラウドセンターで運用してきたユーザーのシステムは順次移行する予定。トーコーも2020年5月末に新センターへ移行し、いち早く運用をスタートさせた。同時に、Power Systems S914(OS:7.4、メモリ:1000CPW、ディスク:100GB)の利用を開始している(図表1)。

 

 QICデータセンター博多駅は、JDCC Tier4準拠という最高水準のファシリティと、ISMS認証やFISCに準拠した厳重なセキュリティを完備している。震度7クラスの地震に耐える免振構造を備え、重要設備はすべて2階以上に設置。2系統の変電所をベースにした、九州電力グループならではの電力供給体制も注目される。博多駅から徒歩数分という立地のよさも加わり、災害に強いハイスペック仕様の都市型データセンターとして完成している。

 また、「QLF(Qic Location Free)サービス」と呼ばれる高速・大容量の拠点間ネットワークにより、QICデータセンターと東京のアクセスポイントを接続しており、PowerクラウドセンターとIBM CloudやAWSなどのパブリッククラウドをダイレクトに接続するサービスも提供している。

 新センターへのサーバー移設手順は、図表2のとおりである。

 

「新センターへのサーバー移設はFBIに全面的に委託し、当社では移行に伴う通信環境の整備と移行後の稼働確認のみに携わりました。新センターとPOWER9搭載マシンへの移行後は、パフォーマンスが2倍以上に向上し、あらためてその性能の高さを実感しています」(佐藤氏)

 コロナ禍でテレワークが進むなか、インターネットVPN経由でどこからでも業務システムを利用できるクラウドサービスの利便性をあらためて感じているという。

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COMPANY PROFILE

本 社:東京都三鷹市
創業:1971年
設立:1975年
資本金:8000万円
売上高:12億円
従業員数: 44名
事業内容:自動車修理用機械工具設備の販売、自動車補修用塗料、研磨剤の販売、塗装印刷用乾燥装置ヒーターの設計・開発・製造・販売
https://www.tohkohpro.com/

1971年に東興商会として創業し、1975年に社名変更。自動車用機械工具、塗料および塗装乾燥機を軸に、1994年に登場してベストセラー商品となった自動車塗装用近赤外線乾燥機「プロモシリーズ」、それまでの金属ヒーターに代わる柔軟性のある薄形の面状発熱体「シリコンラバーヒーター」など、多様な製品・サービスを提供して高い実績を築いている。

 

[i Magazine 2020 Summer掲載]

 

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