MENU

事例|佐川グローバルロジスティクス株式会社 ~データ活用基盤を刷新、独自システムから市販ツール採用へ

COMPANY PROFILE
本 社:東京都品川区
設立:2013年
資本金:15億円
従業員数:6354名(2019年3月)
事業内容:ロジスティクス事業
http://www.sagawa-logi.com/

総合物流企業グループであるSGホールディングスグループの一員。グループ会社に佐川急便や海外物流のSGHグルーバルジャパンなどがある。顧客企業(荷主)の多様な物流ニーズに対して、国内に展開する70以上の物流センターと、流通加工を中心としたさまざまなサービスの組み合わせによりロジスティクスソリューションを提供。取り扱う商材は、アパレル、化粧品、雑貨、健康食品、通信機器など多岐にわたる。

 

 

衣料量販店向けWMSを構築し
物流ソリューションを提供

 佐川グローバルロジスティクスは、総合物流企業グループのSGホールディングスグループ(従業員約9万人、売上高約1兆1180億円2019年3月)の一員で、ロジスティクスソリューションを提供する企業である。グループ会社に、全国に配送ネットワークを築く佐川急便や海外物流を専門とするSGHグルーバルジャパンなどがあり、グループ各社との緊密な連携によって顧客企業(荷主)のニーズにきめ細かく応えられる対応力・機動力が大きな特徴である。

 今回レポートするのは、化粧品や健康食品、通信機器など多様な商材を扱う同社のなかで、衣料量販店向けのアパレル商品・小物・雑貨の物流ソリューションを担当するプラットフォームビジネスユニットの取り組みである。同ユニットが荷主とするアパレルメーカーは20社以上、衣料量販店を展開する企業は200社以上あり、配送先は数千店舗にも及ぶ。

 同ユニットでは、顧客の物流ニーズを踏まえて、商品の入庫から配送までの物流ソリューションをトータルに設計し、顧客ごとのシステムを構築してサービスを提供している。倉庫内のサービスには、X線検診や商品タグ・RFIDタグの取り付け、商品を1着ずつハンガーにかけて納品する「ハンガー納品」など多様な流通加工サービスがある。「ときには倉庫内の業務オペレーションも設計し、ご提案することがあります」と、プラットフォームビジネスユニットの野澤 剛氏(ITシステム課/管理課 課長)は話す。

 同ユニットの強みは、9台のマテハン機(自動仕分機)を含むさまざまな自動化設備によって高品質かつローコストのサービスを提供できることと、倉庫管理システム(WMS)を内製化しているため、顧客ごとに異なるWMSをきめ細かく設計・構築でき、すばやく立ち上げられることである。IBM i上のWMSは2000年代後半に標準化を進めた経緯があり、標準機能をベースにすることによって、スピーディなシステム構築とサービスインが可能になっている。

 

IBM iの移行に伴い
次期データ活用ツールが課題に

 そしてもう1つの強みが情報力・データ活用力で、同ユニットの社員はBIツールを駆使して顧客商品の在庫や配送の状況を分析し、効率化やコスト削減の提案を顧客に対して行っている。

 同ユニットでは従来、データ抽出のためのクエリ・プログラム(RPG)と、抽出したデータをPCへ転送するWindowsアプリケーションを開発し、約50名のユーザーに提供していた。抽出したデータの転送には、IBM i Access for Windowsのデータ転送機能を利用したという。ユーザーはクエリ・プログラムを開いて求めるデータを抽出すると、バックグラウンドでWindowsアプリケーションが起動し、PC上にダウンロード表示されるという仕組みだ。

「ユーザーが必要とするクエリ・プログラムはシステム課で開発して提供していたので、ユーザーは取得したデータをExcelなどで加工して利用する環境が定着していました」(野澤氏)

 2019年1月に、10年以上利用してきたIBM iを入れ替えることになり、従来からのクエリ・プログラムの移行が課題になった。IBM iのOSをバージョンアップするとWindowsアプリケーションの改修が必要になり、約50台のPCの再セットアップも必要になり、移行作業の負荷が大き過ぎると判断されたからである。

「それに加えて、5250画面を使うクエリではデータの多角的な分析に限界があり、その点の解決もテーマでした」(野澤氏)

 

Db2 Web Queryと
PHPQUERYを比較検討

 2017年末からの検討で最初に俎上に乗せたのは、日本IBMのDb2 Web Queryである。

「機能が豊富な点は非常に魅力的でしたが、当社としては従来と同様、データをCSVで吐き出す程度の使い方を想定していたので、少しリッチ過ぎるという印象をもちました」と、野澤氏は振り返る。

 一方、2018年7月にツールの存在を知り検討を始めたのが、オムニサイエンスのPHPQUERYである。最終的に同ツールを採用したが(2018年10月)、初めてツールを見たときの印象を、野澤氏は次のように話す。

「PHPQUERYはこの1〜2年に機能拡張が急ピッチで進んでいますが、初めて見たときはCSVを吐き出す程度の非常にシンプルな製品でした。しかしながら、当社が必要とする機能は最小限備えていたのと、料金が安く、かつ月額料金制で、いつでも解約できる点が気に入り、採用を決めました」

 導入を決める前に、システム課のスタッフ全員(6名)の前でデモを実施してもらい、「開発者目線での評価」も行った。スタッフの感想は、「Query/400とほぼ同じ操作感で、簡単」という内容が大半で、不安視する声はまったくなかったという。

 

メーカーとともに
成長できる関係を築く

 2019年1月のPower S914(IBM i 7.4)へのリプレースに合わせて、PHPQUERYを導入。スタッフ全員で3時間の有償トレーニングを受講し、その後はマニュアルとメール・電話によるサポートだけでクエリ・プログラムの開発を進めてきた。

 開発を担当した池部友紀氏(プラットフォームビジネスユニット ITシステム課 チーフ)は、「以前にRPGで開発したクエリ・プログラムがあったので、それをベースに、ユーザーからの新たな要望を追加して開発していきました。PHPQUERYの機能をフルに使うような開発にはまだ至っていませんが、一般的なクエリなら簡単に開発できます」と感想を語る。

 PHPQUERYで開発したクエリ・プログラムのサービスインは2019年4月。現在までに、従来のクエリをベースにしたプログラムを約10本、新規開発のプログラムを10本ほど開発し、ユーザーに提供してきた。ユーザーの反応は上々という。

 

 

 今後について野澤氏は、「現在は、IBM i上の生データに近いものをユーザーに提供し、ユーザー側で加工してもらう使い方をしていますが、今後はデータを抽出したら、それがユーザーの求める最終形になっているようなクエリ・プログラムの作り込みを行いたいと考えています」と、抱負を述べる。

 システム課ではこれまで、ドリルダウン機能の追加など数々の要望をオムニサイエンスに対して投げてきた。

「オムニサイエンスからはレスポンスよく反応があり、いつも前向きに取り組んでもらえています。今後も、PHPQUERYの利用で気づいたことは伝え、双方で成長していけるような関係を続けていければよいと思っています。PHPQUERYは導入して1年あまりですが、いろいろと活用できるツールだと考えています」(野澤氏)

 

野澤 剛氏 プラットフォームビジネスユニット ITシステム課/管理課課長
池部 友紀氏 野澤 剛氏 プラットフォームビジネスユニット ITシステム課 チーフ

[i Magazine 2020 Spring(2020年2月)掲載]