独自の販売管理システムを
System/3導入時に自社開発
1950年にユーエス・エシアティック・カンパニーとして設立されたユサコは、日本の戦後の復興から現在までの発展を科学技術情報の流通をとおして支えてきた会社である。
設立当初は、海外の出版社との取引を中心に優れた書籍・論文を日本へ紹介。1968年に世界的な情報サービス企業の米トムソン・ロイター社(当時ISI)の総代理店となってからは扱う情報の幅を大きく拡大し、さらに近年は研究支援の分野にも進出し、幅広い業種の企業を対象にビジネスを展開中である(図表1)。
販売中のツール/ソフトウェアには、多くの研究者に利用されている文献管理ツール「EndNote」や各種統計解析ソフト、AI文献検索サービスなどがある
システム部マネージャーの三好誠氏は、「当社は、研究を支援することで社会への貢献を目指しています」と、同社の理念を説明する。
一方、それらの事業を支える基幹システムは、1972年のSystem/3導入以降、一貫して自社開発を基本としてきた。
「海外との取引では、小切手の発行や外貨管理など出版流通特有の処理が発生するためにパッケージに合うものがなく、システムの導入時に当社独自の販売管理システムを自社開発しています。その後、2012~2013年に5250画面をGUI化する大きなプロジェクトをDelphi/400を使って実施しましたが、それも自社開発です。現在は全社員がGUI画面を利用中です」(三好氏)
基幹サーバーは代々IBMミッドレンジ機を使用してきた。現在は2016年導入のPower 814(IBM i 7.2)を利用中である。
Excelなどでデータ抽出条件を設定し
ユーザーに提供
科学・技術情報の提供や研究支援事業では、顧客である大学や企業、医療・研究機関がそれぞれどのような情報ニーズをもち、何を求めているかを具体的に把握することが重要である。そしてそれを知る1つの手がかりは、顧客がどの商品を購入し、どのような販売傾向が見られるか、である。
そのために同社では、IBM i上の販売管理システムのデータを、PC上のExcelやACCESSに取り込む仕組みをエンドユーザーに提供し、基幹データの活用を促進してきた。IBM i上のデータベース(Db2 for i)とExcel・ACCESSをODBCで連携し、データの絞り込み条件などをExcelやACCESSで設定しておくことによって、ユーザーはクリック1つで基幹データを取り込める仕組みである。
ユーザーは、約100名いる従業員の半数以上。ユーザーへは販売計画の達成率や個々の商品の売上実績などを見るためのプログラムをExcel上で設定し、20本ほど提供していた。
「販売計画の進捗状況や個々の商品の売れ行きを知るにはデータを確認するしかないので、部門によっては必須のツールとして活発に使われていました」と、システム部の鑓水淳一氏は話す。
ただしユーザーが異動したり、担当が変わるたびにデータの絞り込み条件などの変更が必要になるため、ユーザーとシステム部門双方の負担が大きく、その課題の解決が重要なテーマとなっていた。
三好氏は、「それを解決するには、ユーザーとシステム部で共通に使え、組織や担当の変更に柔軟に対応可能なBIツールが必要だと考えていました」と振り返る。
BIツールについては、現行の仕組みを使いつつ、2年近くにわたって調査と検討を重ねてきた。
調査にあたって重視したのは、IBM iとの連携性、使いやすさ、コストの3点。しかし、当初調査した3製品はいずれも想定以上に高額で、機能と運用面でも難点があった。
「たとえば、IBM iのデータをCSVにしてWindowsサーバーへ吐き出し分析対象とするツールがありましたが、それだとWindowsサーバーのメンテナンスも必要になり、さらにバッチ転送のタイミングにもよりますが、リアルタイム性にも欠けます。また、ユーザーごとにライセンス料金がかかったり、導入コストが数百万円以上になるのは当社の実情に合わないと判断し、採用を見送りました」(三好氏)
4番目の検討候補として
PHPQUERYが浮上
そうこうするうちに4番目の候補として、オムニサイエンスの「PHPQUERY」が浮上した。三好氏は、同ツールを知ったときの印象を次のように話す。
「私を除くシステム部のメンバーは、SQLのことはよく知っているもののIBM iのQUERY機能については知りません。その点、PHPQUERYはSQLでも開発が可能な点と、ユーザー数が無制限で月額10万円というライセンス料金がとても魅力に感じられました。とりわけ月額プランがあったのが、具体的な検討へ進む要因でした」
そして2019年9月に試用版を使ってトライアルを開始。その2カ月後に採用を決定し、12月から開発をスタートさせた。同社では購入前に約50件に上る機能改善と仕様拡張の要望を出したが、「それに対する対応のよさと、今後のバージョンアップへの期待も採用決定の大きな要因でした」と、三好氏は語る。
同社がオムニサイエンスに対して行った要望の1つは、複数キーによるドリルダウンだった。
「トライアルの時点では1つのキーでしかドリルダウンできませんでしたが、3つ4つのキーでデータを絞り込むのは業務ではよくあるので、機能を拡張してもらいました」(鑓水氏)
また、IBM iのWRKQRY(QUERY処理)コマンドで開発する画面とSQLで開発する画面の検索条件や結果の見え方(表示方法)に違いがあったので、その修正も要望した。「見え方に違いがあるとユーザーにスムーズに使ってもらえなくなるので、対応をお願いしました」(三好氏)
開発は、Excelで提供していた20本のプログラムの置き換えからスタートした。さらに、それまでHTMLベースで運用していた営業日報の作り替えもPHPQUERYで行った。
「従来のExcelベースのプログラムでは関数を使って細かくロジックを組む必要があり、それが変更時の負担になっていました。PHPQUERYは変更時でも検索条件を変えるだけで済むためメンテナンスが容易で、汎用化も可能です。またSQLで組めばグラフ・表などを多用して多彩な見せ方ができるので、ユーザーの要望にきめ細かく対応可能です。PHPQUERYは自由度の高いツールだと感じています」と、鑓水氏は感想を述べる。
同社では、この6月にユーザー向けの説明会を開催し、本番運用を開始した。今後は、現在10種類ある部門別のダッシュボードをさらに細かく設定し、「経営層向け」「グループマネージャー向け」など対象者別・用途別のダッシュボードを設ける予定という。
「当社では現在、SFAツール(Sales Force Assistant)を使い、問い合わせから提案・合意・契約までのパイプライン管理を行っています。その一連のデータをIBM iに取り込み、たとえば今期の見込数から来期の売上目標をPHPQUERYで集約して分析できれば、多くの人が共有でき、経営の判断材料にもなると考えています。経営につながるデータの提供が今後の大きな目標で、PHPQUERYにはBIツールならではのインサイト分析についても期待しています」と、三好氏は語る。
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COMPANY PROFILE
本 社:東京都港区
設立:1950年
資本金: 5000万円
従業員数:90名
事業内容:学術コンテンツの販売・サポート、学術研究支援や教育支援ソフトウェアの販売・サポート、学術セミナーの企画・運営、医薬系広告代理事業など
https://www.usaco.co.jp/
オンラインショップ
http://www2.usaco.co.jp/shop/
今年6月に設立70周年を迎えた学術情報サービスの老舗企業。2019年に、論文投稿支援システム「Chronos」、早期研究成果発見・収集・管理プラットフォーム「Morressier」、電子ジャーナル閲覧支援システム「BrowZine」「LibKey」などの販売を、国内総代理店としてスタートした。
[i Magazine 2020 Summer(2020年7月)掲載]