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事例|株式会社古川製作所 ~Lenovo HX3500導入を機に、基盤・ネットワークを再構築、将来は東西のシステムをオンプレミスで一元化・集約化

 

 

 今年創業60周年を迎えた古川製作所は、1957年に国産初となる真空包装機を開発して以来、自動袋詰シール機やロータリー真空包装機などの先進マシンを開発・製造・販売してきた包装機械のトップメーカーである。製品の対象分野は食品から医療用、工業用へと広がり、現在2万5000社以上への納入実績と40%を超える国内シェアを誇る。また最近では、中国・台湾・タイに拠点を築き、海外事業を拡大させている。

 しかしながら、業績を順調に伸ばす一方で、外資系を交えたライバルメーカーとの競争がいっそう厳しさを増し、次世代を見据えた経営戦略の強化が課題となっていた。

 そしてその一環として、2016年4月に設立されたのがIT戦略室である。室長の余越紀之氏(情報システム課顧問を兼務)は、「IT戦略室は、経営戦略をITの視点で捉え、提言・立案し推進するのがミッションです」と説明する。具体的には、「技術革新」「生産性向上」「業務効率化」を目標とする10項目の活動テーマを定め、取り組みをスタートさせている。10項目のなかには、「ペーパーレス化」や「グループ企業との連携強化」などがある。

 

余越 紀之 氏 IT戦略室 室長 兼  情報システム課 顧問

 

クラウドを検討したものの
2倍以上のコスト増となるために断念

 このIT戦略室の設置と前後して、財務会計システムの再構築が課題として浮上していた。2003年から利用してきた現行システムでは、2019年10月に予定されている消費税率の引き上げと軽減税率への対応が困難であったからである。

 現行システムは、IBM i上で稼働する統合業務パッケージ「e-Pack」をカスタマイズしたものだったので、「まず次のプラットフォームを何にするか、その選定が必要でしたが、IT戦略室が進める次世代のシステム基盤への搭載を念頭に置いて、一緒に検討を進めることにしました」と、余越氏は話す。ただし、新財務会計用のプラットフォームは、新規パッケージへの作り込み期間などを考慮して2016年7月末までの導入が必須とされ、検討期間は1~2カ月ほどしかなかった。

 その新しいシステム基盤の候補として、経営層からはクラウドサービスの打診があった。さっそく複数のクラウド事業者から見積もりを取って検討したところ、「どのクラウドサービスも5年間のTCOで見ると、運用中のサーバーの2倍以上の費用になり、3年を超えたあたりでオンプレミスよりも高額になることがわかりました」と、余越氏は振り返る。「とくにクラウドセンターと全国の拠点間を結ぶ高速通信回線の費用が高額になるため、クラウドサービスの採用を断念しました」(余越氏)

 

 同社では従来から、生産管理や販売管理、営業支援などの基幹システムを搭載するIBM iと各種業務システムが稼働するIBM BladeCenter Sをメインサーバーとして利用してきた(図表1)。このうちBladeCenter Sは営業活動が終了していたのでブレードの追加ができず、業務効率化の柱の1つであるペーパーレス化を実現するワークフローシステムの搭載が見込めなかったことが、次世代基盤の検討に至った理由である。

 

 

 システム基盤の要件としては、「継続して利用できる標準的な技術」「システムの拡張・増設・運用管理が容易」「耐障害性に優れる」などを設定した。そして当初は、IAサーバーを仮想化し、その冗長構成を念頭に置いていたが、そうした折、取引先の田中電機工業からNutanix搭載のレノボの新製品「Lenovo Converged System HX Series」の提案があったのが、ハイパーコンバージド・システムの採用へ進むきっかけである。

 

継続的にマイグレーション可能な点を評価
3台のLenovo HX3500を導入

「製品を子細に検討してみると、要件をすべてクリアしていることに加えて、とくに魅力的に映ったのは、サーバーのスペックが陳腐化したら新しいサーバーを追加して古いサーバーを廃棄することにより、システムを継続的にマイグレーションできる点でした。しかもその調整は自動で行えます。従来は、ハード/ソフトの入れ替えやマイグレーションの作業に始終追われていたので、それからの解放は大きなメリットと考えました」と語るのは、情報システム課主任の貞安啓孝氏である。

 

貞安 啓孝 氏 情報システム課 主任

 

 2016年5月に採用を決め、6月に正式発注。7月12日に同社のサーバールームに搬入され、4日後の7月16日に稼働を開始した。

 導入したのは、3台のHX3500と2台の10Gスイッチ、1台の25Uラックである(図表2)。HX3500のメモリとディスクは、「将来の仮想サーバーの増設を考えて、費用感に合う最大量」(貞安氏)を選択。3台の合計で754GBのメモリ、30.94TBのストレージ(うち、1.36TBはSSD)を搭載した。ハイパーバイザーはNutanix独自のAHVを採用、その上にWindowsとCentOS(Linux)の2種類のサーバー環境を立てた。仮想サーバーの数は、計29台である。HX3500は最小構成の3台だが、1台が故障しても連続稼働できるよう2台分のリソースを上限としてシステムを構成している。

 

 

 

 2017年9月現在、BladeCenter Sと各種サーバーに搭載していたすべての業務アプリケーションをHX3500上に移行・収容した(図表3)。「今後、機能の追加に伴い、HXをもう1台増設する計画」(余越氏)という(図表4)。

 

 

 

将来は全グループ会社の
財務会計システムを集約し、連携化

 また、HX3500へは新規開発のシステムを続々と導入中である。まず2016年11月に、各種帳票を電子化して「X-point」(エイトレッド)に載せたワークフローシステム、2017年2月に懸案の新財務会計システムを導入し、その後、物流管理用のバーコードシステム(独自開発)、就業・人事システムの「タイムプロNX」(アマノ)、ファイル共有システム、ADサーバー、DNSサーバー、Web会議システム「xSyncPrime」(パイオニアVC)などを追加。現在スマートフォンやタブレット(Surface)でも利用可能な営業支援システムを開発中である。

 新しい財務会計システムは、富士通の「Glovia」を採用した。

「2019年10月の消費税関連の法改正に対応しているのに加えて、今後の制度変更や法改正への迅速な対応が望めるのと、経理担当が強く要望していた仕訳処理の自動化やグループ会社の会計処理の統合にも柔軟に対応できる点を評価しました」と、情報システム課副長の木村勝敏氏は採用の理由を述べる。

 

木村 勝敏 氏 情報システム課 副長

 

 IBM i上の基幹システムとの連携は、Windowsサーバー上にGlovia用の仕訳ファイル(CSV)との変換を双方向で行うプログラムを置くことで実現した。来年の2018年2月にはグループ会社1社の財務会計システムを乗せ換え、さらに同5月にもう1社のシステムを統合する計画である。「将来的には全グループ会社の財務会計システムを集約化し、自動連携と処理の一元化を実現する予定です」と、木村氏は言う。

 

サーバーを構築・利用する感覚が
以前とはまったく違う

 同社では、HX3500への業務システムの集約化を進める一方、ネットワーク環境の再構築も実施した。余越氏は、「従来は、ルータや各種スイッチが多数ある多段構成のネットワークでしたが、それを10Gスイッチと1Gスイッチを軸に再設計し、シンプルな構成へ切り替えました。これまでLANケーブルとネットワーク機器類にあふれていたサーバールームがすっきりしました」と話す。その再構築後のネットワークが図表3である。サーバールームは、このネットワークの再設計とHX3500への切り替え・集約によって、従来の1/4ほどのスペースに縮小した。「その分、空調費や光熱費を削減できます」と木村氏。

 HX3500は導入後、ハイパーコンバージド技術の威力をいかんなく発揮している。貞安氏は、「これまで新規にサーバーを利用するときは、外部からハードウェアを調達して環境をセットアップする手続きが必要で、外部ベンダーに依頼することも少なくありませんでした。しかし今は数クリックですぐに環境を構築でき、Windowsはデータセンターエディションを導入しているのでコストもまったく気になりません。サーバーを構築・利用する時間的・コスト的な感覚が従来とまったく違い、オープンソースや試作中のシステムを手軽に試せるようになりました」と、導入効果を語る。

 同社のシステム環境は、HX3500導入後、Nutanix上のWindowsとLinux、およびIBM iの3つに大きく整理された。余越氏は今後の方向性を、次のように語る。

「クラウドは依然として魅力的なサービスですが、当社がそのメリットを享受するには、システム間の連携を効率化し低コスト化を図るために、全システムをクラウドへ上げる必要があります。しかし現状は、生産管理を中心に密結合でシステムを構成しているので、どうしてもオンプレミスに置かざるを得ません。そのためIBM iは次期機種も採用し、そのほかの業務システムもハイパーコンバージドの増設を予定しています。2018年にはNutanixを東日本エリアの拠点にも配置し、東西でシステムの一元化と集約化を進める計画です」(図表4

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COMPANY PROFILE

株式会社古川製作所

本  社:東京都品川区
創  業:1957年
設  立:1962年
資本金:16億円
売上高:79億円(2017年1月)
従業員数:283名(2017年4月)
事業内容:真空包装機、自動袋詰シール機、トレーシール機 、自動殺菌冷却乾燥装置等の開発・製造・販売

http://www.furukawa-mfg.co.jp/

 

[IS magazine No.17(2017年4月掲載)]