システム情報を明文化し
誰でも共有できるように
ムラヤマの創業は1902年。2016年には創業114年を迎えた。展示会や博覧会、販促イベント、商業・アミューズメント施設、国際イベント、テーマパークについて、企画・演出から運営まで空間づくりをトータルプロデュースすることで、高い実績を築いてきた。近年は上海、シンガポールに現地法人を設立し、アジア圏へ進出する日本企業を支援するなど、海外での実績を伸ばしている。
同社はシステム/36時代から、販売管理や人事、経理、給与、財務などの基幹システムをRPGで開発してきた。2001年に財務、会計、給与の一部をIBM i上のパッケージ製品に移行し、「LANSA for the Web」(ランサ・ジャパン)でフロントエンドのWeb画面を開発しているが、販売管理は当時開発したシステムに改修を重ねながら今に至るまで運用を続けている。現在のサーバーは、2013年に導入した「Power 720」。
情報システム部は2012年に人事総務部と統合し、現在は畑修一プロデューサーを筆頭に社内要員3名が、人事総務部内のシステムチームとして、基幹システムからPC、ネットワーク、メール、スマートデバイスなど社内のあらゆるIT運用を担当している。3名全員がRPGとLANSAの開発スキルを備え、各部門から寄せられる改修依頼に対応する。
同社が「SS/TOOL」(アイエステクノポート)を導入して、プログラム資産の見える化に取り組むことになったきっかけの1つには、人事総務部との統合があったようだ。
「それまでの慣習として、何か開発が発生した場合はWordやExcelなどで仕様書を残すようにしていました。ただし仕様書のフォーマットはバラバラですし、バックログが増えると、どうしても開発が優先され、ドキュメントに残す余裕がもてないことも多かったです。それでも情報システム部として活動していたときは、私を含め、開発に必要なプログラム情報は全員の頭の中にあると考えていました。しかし人事総務部に統合されたことで、そうしたシステム情報をきちんと明文化し、部内の誰でも必要なときに参照できるようにしておかねばならないと考えるようになりました」(畑氏)
東日本大震災の経験などもあり、BCP対策の一環として、システム情報をきちんと残すことの重要性を経営側も認識し、2013年頃に可視化ツールの検討をスタートさせることになった。
IBM iの中に
いつでも参照できる仕様書DB誕生
IT展示会で知った「SS/TOOL」はIBM i上で完結し、必要なアウトプットが揃っており、かつ「PDFオプション」によりすべてPDFファイルで保存しておけるなどの点を評価して導入を決定したと、畑氏は言う。
2014年7月に「SS/TOOL」を導入したあと、すぐに分析に着手したのは、長くて複雑、かつ改修依頼の多い受注書関連のプログラムであった。同社では全オブジェクトを分析することはせず、開発・改修が発生するたびに、プログラムの影響範囲を調べるなど、その都度、「SS/TOOL」を使って調べるように運用を定着させている。
使用頻度が高いのは、CLジョブフロー図、プログラム仕様書、プログラム・ファイル関連図、サブルーチン構造書、親プログラム一覧、文字列検索などの機能である。
「導入後1カ月ほどで、メンバー全員が利用方法やどのようなアウトプットが得られるかを理解し、自然に運用が定着しました。ドキュメントを整備するのが目的ではなく、開発で必要が生じたときに必要な部分を調べるといった使い方です。IBM iの中に、いつでも使える最新の仕様書DBがあるような感覚でしょうか。全員で打ち合わせをする際も、手元に正確なドキュメントがあると、進捗の度合いがまったく違います」と語る畑氏は、さらに導入効果について次のように指摘する。
「導入前は私を含めて、メンバー全員が必要なプログラム情報は頭の中にあると思っていましたが、実際に『SS/TOOL』を使ってみると、関連するプログラムが即座に、かつ正確に把握できます。ツールがあるとないとでは、やはりずいぶん違うと感じています。全員が同じ情報を共有することで、世代交代を見据えたスキルの継承にも有効だと考えています」
同社では中・小規模の改修作業が月に平均5件ほど発生しているが、「SS/TOOL」の導入により、開発工数は確実に削減されており、プログラム品質も向上している。
またプログラムの棚卸しにも、効果を発揮しているようだ。
同社では「SS/TOOL」の導入以前から、コマンドでプログラムの最終更新日を調べ、長く使用していないソースは別ライブラリに退避させておくなどの作業を実施していた。しかしバックログが増えると、なかなかそうした作業に手をつける時間を確保できなかったが、「SS/TOOL」の導入により、最終更新日の一覧を簡単に出力できるので、棚卸し作業も進むようになった。以前は1万本近くあったプログラムが、現在は5000本程度にまで整理されているという。
「モバイルやワークフロー、文書化や電子化、複写伝票のカット紙への移行、日報など、次年度以降の構築目標を検討しています。プログラム資産が見える化できたことで、新規開発にしろ、既存システムとの連携にしろ、今後のシステム拡張に手をつけやすくなったことは確かです」(畑氏)
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COMPANY PROFILE
株式会社ムラヤマ
本 社:東京都江東区
創 業:1902年
設 立:1958年
資本金:4億2700万円
従業員数:369名(2016年年2月)
事業内容:ディスプレイやイベント、商業施設や文化施設に関連する企画、設計、監理、施工など。
http://www.murayama.co.jp/
[i Magazine 2016 Autumn(2016年8月)掲載]