AIチャットボットに必要な
一連の支援サービスを提供
数あるAIの適用分野のなかで、急速に成長しているのがAIチャットボットである。コールセンターやヘルプデスクなどに寄せられるさまざまな問い合わせに対して、企業内に蓄積されている業務ナレッジをもとに作成したFAQや業務シナリオに基づき、適切な回答をチャット形式で自動的に返す。
人件費の増大や生産性の低下、属人化による対応品質のばらつき、教育やスキルアップに費やす工数の増大など、現在のコールセンターやヘルプデスクが直面する課題に対する効果的な解決策として、AIチャットボットは注目を集めている。
ただしAIソリューションの多くがそうであるように、AIチャットボットを成功に導く道も平坦ではない。チャットボットの効果を最大限に発揮させるには、適切な業務シナリオに基づいたFAQなどのデータ準備が必要で、かつ正答率を高めていくには、チャットボットが答えられなかった質問をチェックし、定期的にシナリオを見直すなどの継続的な運用が求められる。
つまり、AIチャットボットには適切なシナリオとデータの準備、継続的な改善、定着化のための運用体制や仕組みづくりなどが不可欠であり、「AIだから、なんとなく便利になりそうだ」という幻想を抱いて、安易に導入するのは禁物である。
そこでこうした課題を解決すべく、JBサービス(以下、JBS)が2020年2月にリリースしたのが、「AIヘルプデスク運用支援サービス」である。
これはIBM Watsonをベースに提供するAIチャットボットソリューションに、継続的な導入・運用・改善支援サービスをセットにしたもの。
「プロジェクト全体のプランニングからQAデータの準備、チューニング、検証、社内の利用活性化、継続的な維持運用作業など、AIチャットボットを円滑に運用するための一連の支援サービスを提供しています」と、セキュリティ事業部 DX推進部の千葉賢部長は語る。
プロジェクト計画からデータ準備
AI育成や社内体制の整備まで
「AIヘルプデスク運用支援サービス」では、AIチャットボットの導入・運用に必要な作業ステップを下記のように定義し、フェーズ1~3のサービスとして提供している(図表1)。
(1)AI適用範囲の決定
AI導入の目的を明確化し、適用範囲(スコープ)を検討・確定し、想定効果の可視化とKPIの設定を行うなど、プロジェクト全体のプラニングを実施する。
(2)QAデータの準備
既存のFAQデータを確認し、既存の問い合わせログから傾向や割合を分析しながらQAデータを作成する。FAQがない場合は、ゼロからの作成を実施する。
(3)初期AI育成登録作業
AIチャットボットが的確な回答を返すように、AIの学習・育成を行う。育成済みデータを登録・学習すると同時に、業務シナリオを精査し、質問文の言い回しのバリエーションを用意して同じ回答に紐づけるなど、正答率を高めるための施策を実施する。
(4)運用前検証
一部のユーザーがAIチャットボットを利用し、正答率や使い勝手を検証したうえで全社公開・本運用をスタートさせる。
(5)利用者へのアナウンス・啓蒙
本運用後の利用状況を確認しながら、利用するオペレーターあるいは社内ユーザーに対してAI導入目的の浸透や利用促進への理解を進め、AIチャットボットへの効果的な質問の仕方などに関する教育を実施する。
(6)継続運用作業
利用実績やKPI達成度などに関するレポートを定期的に提供し、正答率や利用率向上への改善策を提案する。また正答率を高めるために、AIチャットボットが答えられなかった質問を常時チェックし、定期的にシナリオを見直すなどのメンテナンス/チューニング作業を継続的に実施する。
上記のサービスの中心となるのは、JBグループの運用センターとしてJBSが運営を担当するSMAC(Solution Manage
ment and Access Center)。ここに常駐するAI認定技術者が、実際の作業を行う(図表2)。
「技術者たちがこれまでに培った多くのシステム&サービスの保守・運用経験や、社内もしくはお客様に導入したAIチャットボットの知見などを活かしながら、導入に伴うデータ準備、運用維持、チューニングなど運用負荷の高い作業を代行し、ログの分析結果から問い合わせ精度向上のための助言やサポート、課題解決への提案を行っています」と、セキュリティ事業部 の林由香里氏(DX推進部 AIビジネス推進グループ)は語る。
同社は単なる器としてのAIではなく、内容を充実させ、利用をより積極的に推進するためのサービスをセットにして、AIチャットボットビジネスを展開していくようだ。
千葉 賢氏
セキュリティ事業部 DX推進部
部長
林 由香里氏
セキュリティ事業部 DX推進部
AIビジネス推進グループ
AI支援サービス
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