従来は顧客番号などを手入力
返品処理に手間と時間がかかる
スマイル・ジャパンは、2012年に設立された健康・美容関連商品の通信販売会社である。扱い商品の大半が自社開発であるのが大きな特徴で、特色のある「サプリメント」「化粧品」「健康茶」などを多数ラインナップしている。
販売方法はWebと電話・FAX・はがき経由の2系統で、売上比率は20対80と、電話・FAX・はがき経由が大きな比率を占めている。毎月の購入者は2万?3万名に及び、そのうちの90%がリピーター。年齢層は30代後半から80代にまで広がる。Webからの購入者の中心年齢は40歳前後、電話・FAX・はがき経由は60歳前後である。
Web販売の場合は、カートに入れられ注文が確定したものを基幹システム(IBM i)に取り込んで処理するが、電話・FAX・はがきによる注文はオペレーターが手入力で基幹システムに登録する形態をとっている。
一方、いったん購入されたものが返送されてくる返品処理は、返送品の箱を開封し、そのなかに同梱されている送り状や郵振用紙、納品書で顧客名を調べてから、基幹システム上で処理を行う手順を踏んでいた。
「しかし、箱を開封する場所と基幹システムで事務処理を行う場所が違っていたので処理漏れが起きたり、基幹システムでは顧客番号や受注番号を手入力して該当の受注を探す仕組みだったので、処理に非常に時間がかかることもありました」と、システム部の仲井正人氏は従来の課題を説明する。
体験セミナーで
IBM i連携のシステムを学習
そこで、スマートデバイスのバーコード読み取り機能を使い、読み取ったデータを基幹システムと連携させて返品作業を効率化したのが、今回紹介するシステムである。
同社では設立後まもない2012年にミガロ.のDelphi/400を導入し、IBM i上の販売管理システムと連携するCTI(電話・コンピュータの統合システム)を構築した経緯がある。その後、Delphi/400を使って振込用紙のフォーマットを改修したり、さまざまなシステムに適用してきた。
今回のシステムは、仲井氏がミガロ.主催の体験セミナーに参加し、モバイルデバイスを用いてバーコードを読み取りIBM i上の基幹システムとやり取りする仕組みを学習したことが発端だった。
「これは便利だと思い、当社の業務で適用できるものを探して浮上したのが返品処理業務でした」(仲井氏)
項目の選択で登録でき
処理スピードが向上
同社の購入者は8?9割が郵振用紙を使用している。返品の場合も郵振用紙の利用者が大半なので、その用紙に付けられているバーコードを読み取れば購入者と受注商品をスピーディかつ正確に特定できる。
システムは、スマートデバイスのカメラを使ってバーコードを読み取ると、IBM i上の受注ファイルへ送信されて照合が行われ、受注データが確定するとスマートデバイスの「返品登録画面」に送信されて受注番号と顧客名が表示され、返品作業を行う準備が整うという仕組みである(図表1~図表5)。
●図表キャプション|スマートデバイスのカメラを使い郵振用紙上のバーコードを読み取ると、IBM i上の受注ファイルへ送信されて照合が行われる。受注データが確定するとスマートデバイスの「返品登録画面」に送信されて受注番号と顧客名が表示される。
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返品登録画面では、従来5250画面上で行っていた処理項目をすべて網羅した。ただし「返品日」や「返品理由」「定期の休止理由」の登録は、従来はすべて手入力だったが、新しいシステムでは項目からの選択とした。
●図表キャプション|商品を購入した顧客からの返品はダンボール箱で送られてくる。返品作業はこれの開梱から始まる。この作業には広いスペースが必要で、従来は開梱作業と返品の事務作業を別の場所で行う必要があった。そのため作業の非効率や作業もれの発生が問題になっていた。返品処理業務のスマートデバイス化で、問題は一挙に解決した。
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「このシステム化により、返品処理の事務作業を箱の開封場所で行えるようになり、処理漏れなどの問題が解消しました。また、顧客番号などを意識せずにバーコードの読み取りだけで受注商品を確定でき、また項目の選択だけで処理が可能なので、作業時間を1/10に短縮できました」と、仲井氏は話す。
返品処理は1日に10~20件程度あるので、従来1時間かかっていたのを5~6分で終えられるようになった。
「また、5250画面で返品作業をするには多少の慣れが必要ですが、スマートデバイスであれば入社直後の担当者でもすぐに使いこなせる点も大きな導入効果です」(仲井氏)
●図表キャプション|スマートデバイスを使う返品処理作業は、従来と比較して、処理時間が1/10に短縮した。また、作業もれはゼロになった。スマートデバイスは直感的に操作できるため、入社直後の担当者でもすぐに使いこなせ、教育コストやヘルプデスクコストを下げる点でも効果がある。
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当初の開発はiPhoneで行っていたが、現場に導入したデバイスはAndroid機にした。
「iPhoneで作動したものがAndroidでは作動しないなどの不具合が一部でありましたが、ミガロ.のサポートによって難なく解決しました」と、仲井氏は語る。
アプリ開発よりも
iPhoneの環境設定に時間がかかる
開発は2015年にスタートし、2017年2月にカットオーバーした。「返品処理用アプリの開発自体は約2カ月で終えましたが、その前段のiPhoneの開発環境の設定に不慣れだったため非常に時間がかかりました」(仲井氏)
同社は現在、Webでの受注データをCSVで取り出し、IBM i上の顧客マスターや受注データファイルへ受け渡すシステムを組んでいるが、今後、受注データをリアルタイムにIBM iに反映させる拡張を行う予定という。
「当社の場合、Web販売はまだ非常に小さな比率ですが、着実に増加しています。そしてその内訳を見ると、スマートフォン経由とPC経由の比率は従来40対60でしたが、今年に入って70対30と逆転し、大きな変化が見られます。消費者動向の変化を見据えながら、スピーディに対応していくつもりです」と、仲井氏は抱負を語る。
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COMPANY PROFILE
株式会社スマイル・ジャパン
本社:福島県郡山市
設立:2012年
資本金:1000万円
売上高:8億円
従業員数:20名(契約社員・パートを含む)
事業内容:家庭健康食品、化粧品、医薬部外品など健康・美容関連商品の通信販売展開
http://sukoyaka-egao.jp/
[i Magazine 2017 Spring(2017年2月)掲載]