記事本数の推移で
動向が見える
日立ソリューションズの研究開発部で主管技師を務める吉田行男氏は、2000年からオープンソースに関わってきた。ちょうど各種ハードウェアへのLinuxのバンドルがメーカー各社で始まった頃で、Linuxを活用するビジネスの開発が吉田氏の担当だった。
そこで吉田氏は、Linux関連情報の収集と、標準化動向や製品、ベンダーの調査・検証を開始したが、収集する情報が増えてきた2003年に、Linux関連の記事をメールマガジンやニュースサイトから取得するプログラムを自分用に開発し、使い始めた。
このプログラムは、各メディアからRSSフィードで取得した記事をカテゴリー別に8つのファイルに蓄積し、記事の一覧をWebブラウザで表示できるようにしたものである。検索機能もあり、カテゴリー別やキーワード別、媒体別など多様な切り口で記事を表示できる。
取得する記事の種類は、吉田氏の仕事の広がりに伴って、オープンソースやクラウド、ビッグデータなどが追加され、Twitterも取得対象メディアに加えられたが、吉田氏は「このプログラムによって、市場の動向を根拠のあるデータに基づいて詳細に把握できるようになりました」と、次のように話す。
「たとえば、IoTや機械学習といったビッグデータ関連のキーワードを含む記事の本数を月別に集計して時系列で並べると、IoTを含む記事が2015年1月から突如として増え始めることや、ビッグデータという言葉がバズワードと言われながらも依然として頻出していることがわかります(図表2)。また、クラウドサービスの対比でも、AzureやAWSが優勢な中にあってニフティの健闘がとらえられています(図表3)。ビジネスへの効果としては、新しい製品や技術、ベンダーをいち早く発見できるようになり、すばやいアプローチが可能になりました」
OSS記事のまとめを
10年以上配信
吉田氏は、2003年にプログラムを使い始めたのと同時に、注目記事を紹介するメールマガジンをスタートさせた。それが現在も続く『Today’s Linux』で、内容はこの12年間にLinux中心からオープンソース全般へと大きく広がったが、メールマガジン自体は「ほぼ毎日」変わらずに配信されてきた(図表)。
『Today’s Linux』は、「今日の話題」と「今日のニュース」で構成され、毎回50?60本のオープンソース関連記事が掲載されている。吉田氏は「メディアサイトから記事を取得しただけでは膨大すぎてポイントがつかめないので、『Today’s Linux』のようなまとめは、私自身が必要としていたものでした」と言う。
朝、出社すると、前日のオープンソース関連記事を一覧させてピックアップし、記事タイトルとURLを貼りつけて配信するのが、吉田氏の日課である。時間にすると20~30分の作業だが、これを12年間欠かさずに継続してきた。
さらに2014年11月からは、ThinkITサイトで「週刊OSSウォッチ」の連載を始めた(*1)。1週間分の『Today’s Linux』から記事をセレクトし、200~300字程度のコメントを付けたコラムである。
また昨年11月からは、「より賢く活用するためのOSS最新動向」という連載もZDnet上でスタートさせた(*2)。月1回の掲載ペースで、こちらは調査や分析に基づく読み応えのある解説記事である。
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「日本の企業情報システムは、オープンソースなしには成立し得ない状況になっています。そうした中で、『攻めのIT』を実現するためにオープンソースをいかに活用するか、真剣に検討すべき時期にきています。オープンソース分野の最新の動きをわかりやすく伝えるメールマガジンやコラムを、今後も提供していくつもりです」と吉田氏は抱負を述べる。
吉田 行男氏
株式会社日立ソリューションズ
技術開発本部 研究開発部
主管技師
エンジニア歴:34年
[IS magazine No.12(2016年7月)掲載]