基幹系はRPGで
オープン系はJavaで
i Magazine (以下、i Mag) IBM iの利用を開始して、どのぐらいですか。
村田 当社は2000年に、全国10社の販売会社を統合しました。それまで各社が多種多様なシステムを導入していたのですが、販社統合を機に、IBM iへシステムを統合しました。IBM iはそれまで主に関西および関東の販社が利用していたのですが、運用管理性や統合の容易性、多様なシステムを利用可能である点などを評価し、IBM iによる統合を決断しました。
RPGで開発された現在の販売・物流システムが本稼働したのは、2001年10月です。関西の販社では統合前、約10年にわたり使用していたので、その時代を含めればIBM iを25年ほど使っていることになります。現在は販売・物流以外にも、海外工場向けの生産管理システムなどもIBM i上で開発しています。
i Mag IBM iから別サーバーへ移行して、基幹システムを全面再構築することを検討したことはありますか。
村田 システムを統合して数年たった2003~2004年ころに、情報システム部の前責任者がIBM iからオープン系サーバーへの移行を検討したことがありました。当時は、「IBM iはオフコンだから古い、オープン系こそが今後の主流」などと、しきりに言われていた時代でした。実際にプロジェクトを組織し、各メーカーに提案や見積を依頼していたのですが、大規模なコストや工数がかかり、リスクも大きいと考えられました。さらに同じころ、Windows上でJavaによりCRMシステムを新規開発していたので、トップの判断でそのCRM構築を優先させることになり、結局IBM iからの移行検討は立ち消えになりました。その後は何度かベンダーから移行提案を受けていますが、移行計画に上げるほど真剣に検討したことはありません。
ただし部分的な分離・移行は検討したことがあります。2016年4月に、Windows上で運用してきた会計システムを、別のERPへ移行しました。その際、物流システムを販売管理システムから分離し、WindowsのERPへ移行することを検討したのですが、結局これも断念しました。販売・物流・生産の各システムは密接に連携し、ほぼ一体となって稼働していたので、物流だけを分離させるのは難しく、業務の生産性も落ちると判断したからです。
i Mag 情報システム部は現在、何名で構成されていますか。
村田 情報システム部は現在、合計13名です。部長・次長の2名が管理職で、残る11名のうち、開発が6名、インフラ系の運用管理が2名、そして残る2名が現在、RPGとJavaの開発スキルを学習中です。
6名の開発者のうち、RPGが2名、Javaが2名、残る2名はQuery/400などを使ってユーザー部門からのリクエストに応えています。このほか外部ベンダーからの開発者6名が常駐しています。こちらもRPGとJavaが半々ですね。社内の開発者は、基幹システムやWeb系アプリケーションのメンテナンスが中心です。とくに販売・物流システムは毎年、多くの改修案件が寄せられるので、社内・外注を含めて対応に追われています。
IBM iを含めた
オールクラウド化が今後の目標
i Mag 社内開発スキルをどのように考えていますか。
村田 開発スキルの基本はRPGですが、2005年にJavaでCRMを構築して以来、Web系を中心にJavaのスキルを徐々に高めるように努力してきました。最初はRPGのほうが圧倒的に生産性は高かったのですが、10年ほどたって、やっとJavaも使いこなせるようになっています。
今は基幹系がRPG、オープン系がJavaの2本立てで、あとは「KONA」(三和コムテック)などの開発ツールを使って、5250画面をWeb化したり、モバイルに対応させたりしています。当社では店舗で利用するシステムはスマートデバイスが中心で、バックヤード業務のみ5250画面を使っています。
i Mag 今後のITに向けた目標は何ですか。
村田 今後の目標として、IBM iを含むオールクラウド化を目指しています。2015年には最初の試みとして、マイナンバーを管理する人事系システムをクラウドサービスで開始しました。2017年には、グループウェアをSaaS型のクラウドへ移行させる予定です。オールクラウド化は最短で今後3年、長くて5年というスパンでの目標で、IBM iもどこかのタイミングで、オンプレミスからIaaSによるクラウド環境へ移行しようと考えています。
i Mag その場合、基幹システムを全面再構築する可能性はありますか。
村田 IBM iから別サーバーに移行して全面再構築するとなると、コストも工数も要し、体力的にも負荷が大きいと考えられるため、現時点では考えていません。根本的にサーバーを変えるとなれば、現在のスキルの継承も難しくなり、システム人員を一新する必要もあります。少なくともあと5年程度は、運用および人員体制ともに、現状のIBM i運用を維持できると思っています。スマートデバイスのおかげで、エンドユーザーにとっては、RPGアプリケーションであろうとなかろうと、違和感なく今風に利用できるようになった点も大きいですね。
ただし唯一不安材料があるとしたら、やはり人材の問題です。当社でもRPG開発の主軸は40代・50代で、外部からの常駐スタッフも同年代。RPGを使える若手エンジニアの派遣は年々難しくなるだろうと、ベンダーからは言われています。やはり高齢化していくのに伴い、スピード感や発想力が落ちていくことは否定できません。そこで次の開発の主軸を育てるべく、現在20代と30代の2名のスタッフに、RPGとJavaの教育を実施しているところです。
5年後には、IT環境自体が大きく変化している可能性もあります。その時点で、将来的なIT運用をどのように進めていくのか、あらためて考えることになるかもしれません。でも今のところは、「IBM iも、まだまだ捨てたものじゃない」と思っています。
・・・・・
株式会社アートネイチャー
IBM i User Profile
運用歴:販社を統合した2001年から
運用システム:販売・物流システム、海外工場向けの生産管理システム
RPGのプログラム本数:約4100本
開発言語:RPG、Java
開発ツール:KONA
システム部門人員数:13名
構成
20代:1名
30代:5名
40代:4名
50代:3名
COMPANY PROFILE
本社:東京都渋谷区
創業:1965年
設立:1967年
資本金:36億6724万円(2016年12月末)
売上高:405億1500万円(2016年度、連結)
従業員数:3795名(連結)、2369名(単体)
事業内容:各種毛髪製品の製造販売、増毛・育毛サービスの提供、ヘアケア商品の販売
[i Magazine 2017年 Spring (2017年3月)掲載]