U研のビッグイベントの1つ、iSUCが今年から「User & IBM NEXT 2018」に名を変えて、
新たなスタートを切る。ユーザーを取り巻く環境の変化に対応し、真に価値ある開催へ、
大胆な改革に挑む。その意気込みとコンセプトを実行委員長である後藤順滋氏に聞く。
後藤 順滋 氏
User&IBM NEXT 2018 実行委員長
株式会社京王ITソリューションズ 取締役社長
「改革して継続すべき」
圧倒的多数の意見を背景に
IS magazine(以下、IS) 昨年開催された「第28回 iSUC別府大会」を最後に、「iSUC」と名の付くカンファレンスは終了し、今年から 「NEXT」という名前で生まれ変わることになりました。その背景を教えてください。
後藤 AS/400を中心とした中小型機ユーザーが意見交換する場としてスタートしたiSUCは、時代とともにその姿を変えていきました。しかし、日本IBM(以下、IBM)自体がマシン販売からサービス、ソリューションの提供へとビジネスの舵を大きく切るスピードには追随できていないと感じ始めていました。それは前々回の新潟大会(2016年開催)あたりから、参加者数がわずかながらも減少傾向を示すことで顕在化し始めたと思います。大会を維持するため、各地区研に動員を促すことにも疑問が呈され、あらためてiSUCの価値を考える動きが広がりました。そこで全国IBMユーザー研究会連合会(全国研)では検討委員会を発足させ、いろいろな人に意見を聞きながら議論してきたのです。研鑽と交流のリアルな場に参加した人たちからは、「楽しかった」と評価されましたが、メンバーを送る立場の会員からは、「iSUCにはお祭りとか、ご褒美のようなイメージがあり、楽しいだけでは抵抗感がある」との声も聞かれました。
IS 「iSUCはもう役割を終えた」という意見はありましたか。
後藤 研鑽と交流を目的に、ユーザーやビジネスパートナーを含めIBMコミュニティに関わる多くの人たちがリアルな場に一同に会し、対話し、多種多様な情報に触れる機会はとても貴重です。その価値は、多くの人が認めていました。ただし「今のままではいけない」「変えていく必要がある」と、これまでのiSUC実行委員やU研委員は感じていました。とくに、多大な賛助をいただいているIBMがどう考えているかを重視しました。IBM社内の一部でアンケートを取っていただきましたが、その結果は「改革して継続すべき」という意見が圧倒的多数で、「終わらせるべき」「現状のまま継続すべき」という声はなかったと聞いています。検討委員会はその最も困難な道を進むと決定し、新たな大会として生まれ変わる意気込みとして、28年間慣れ親しんだ「iSUC」という名称を「NEXT」に変更し、札幌大会を「NEXT 2018」と呼称することにしました。
参加費やスケジュールを見直し
充実したコンテンツを用意
IS NEXT 2018は、どのように変わるのでしょうか。
後藤 「改革して継続すべき」と判断したのであれば、まずは参加価値のある大会にしなければなりません。その価値を享受するのは会員だけでなく、IBMやパートナー企業も含まれます。彼らに新たな技術、よりよいソリューションの情報を積極的に提供してもらうことで価値が高まると考えました。そこで大会の信義則の1つである「営業活動の禁止」を除外することにしました。営業というと、どうしても「売りつけられる」という悪いイメージがありますが、販売する側は、自分たちの製品で顧客を十分に満足させたいと考えているだけです。的外れであったり、今求めているものと異なるなら、はっきりと拒否すればいいだけです。逆にユーザーの側から「活かし方を提案する」こともありだと考えます。そんなことからNEXT 2018の原点として、ユーザーとIBM、ビジネスパートナーはイコールパートナーであらねばならないと考えました。
IS 参加費の見直しにも着手されたようですね。
後藤 U研理事会からは、コストを見直し参加費を下げるよう努力してほしいとの要望がありました。何より参加しやすいイベントにすることが重要であり、参加費はその入り口であると考えて、減額に踏み切りました。大会運営の経費を隅々まで見直し、コスト削減に努め、今年のNEXT 2018では会員参加費を1人当たり3万9800円に設定しました。これを正規料金とし、早期割引は実施しない予定です。その収入減を少しでも補うために、会場の柱や床面、天井からのバナー広告などの募集企画を進めています。さらに会員の皆様にスポンサーシップを募っています。大会運営のための機材や、食品・飲料に限らず参加者に喜ばれるものの提供など、ぜひ自社製品の宣伝に大会を利用していただきたくお願いしています。
IS 思い切った減額になりますね。
後藤 そうですね。ただし「安かろう、悪かろう」は絶対に避けたいので、参加費は下げても、今まで以上に充実した内容にすべく実行委員会のメンバー全員で知恵を絞っています。たとえば会場コストを削減するために借用期間を短縮した結果、開催スケジュールを変更しました。今年は11月7日(水)、8日(木)、9日(金)の3日間の日程ですが、初日は午後4時からスタートし、3日目の午後4時に終了します。今までは初日の正午から3日目の正午までだったので、同じ48時間でもその構成が変わるわけです。会社の所在地によっては、初日の朝に出社してから参加していただけるかもしれません。
IS 内容はどのように変わるのですか。
後藤 1日目は「交流」、2日目は「研鑽」、3日目は「北海道研とのコラボ」をテーマにしています。1日目は午後4時からのオープニングセッションに続き、交流をテーマにしたイベントを展開します。まずはファーストタイムセッション、そして目的別にU研倶楽部、女性フォーラム、ハッカソンなどのディスカッション型セッションを開催する予定です。まだ実行委員会で検討している途中ですが、モール会場を含めて会場全体を活用したイベントにしたいと考えています。そしてディスカッションしつつ、そのまま「U研ナイト」に突入します。お酒を飲みながら、さらに交流を盛り上げる。今までのiSUCでは初日に「iES」と呼ばれる交流会を開催していますが、NEXT 2018ではそれを2日目に移し、初日の夜は気軽に交流する場を作って、大会期間をともに過ごすたくさんの仲間を作ってもらおうと考えています。
NEXT 2018の3本柱
IBM i、Watson & Cloud、ISE
IS 2日目の企画内容を教えてください。
後藤 2日目は研鑽に重きをおいたセッションを集中させています。NEXT 2018では、IBMの協力により3つの柱を立てました。1つ目は今年30周年を迎えるIBM i、2つ目はWatson & Cloud、3つ目は日本アイ・ビー・エム システムズ・エンジニアリング(ISE)による最新テクノロジーの紹介です。3つの会場でそれぞれのセッションを連続的に開催する一方、実際に触れられるハンズオンの会場もご用意して、IBMによるインタラクティブなセッション展開を目指します。モール会場にもIBM iに特化したスペースを設けるほか、昨年好評だった「ISE Show Room」を会場入り口付近に設置し、Watsonやブロックチェーン、RPAなどの体験型展示をご覧いただく予定です。もちろんiSUCの遺伝子を引き継ぎ、事例紹介のセッションを充実させるとともに、IT研究会やJGSの発表の場も用意します。とくにIT研究会ではNEXTを全国大会と位置づけ、クロージングで優秀研究を表彰する予定です。前日に続き、ハッカソンやアイデアソンにも力を入れます。そして夜には参加者が一堂に会した交流会を開催します。
IS それでは3日目はどうでしょうか。
後藤 最終日は正午からのIBM i特別講演をはさんで、午前・午後とセッションやハンズオン、ハッカソンなどが続きます。またこの日は北海道研とのコラボの日として、地区研活動の活性化と新規会員獲得を目指した招待客をお迎えします。会場でも北海道研セッションを散りばめるほか、モール会場では北海道らしさをお見せしたく企画検討を進めています。そして午後2時すぎから特別講演を開催します。昨年まで講演は初日のオープニングセッションで開催していましたが、今年は最終日の最後の企画としてご用意するつもりです。
企画満載のモール会場で
最新ソリューションに触れる
IS 多彩なソリューションが出展されるモールについてはいかがですか。
後藤 モール運営も、さまざまな改革を検討しています。出展されるパートナーやベンダーにとっても価値ある大会とするために、先ほどお話ししたとおり信義則の一部を変更しました。またモール出展費用も例年より減額し、モール出展者の方々の参加費も見直しました。モール出店のオプションとして、展示内容と連動したモールコラボセッションやランチョンセッションもご用意しています。さらにモール設営時に、各社のモールPR映像を短く撮影し、オープニングセッションや通常セッションの開始前に無償で上映して参加者に訴求することも考えています。モール会場は参加者とビジネスパートナーが意見交換する場と位置づけ、多彩なソリューションに触れ、そのノウハウや技術力を理解する機会をできるだけ多く得られるように努力していくつもりです。
IS NEXT 2018という名前に並び「User & IBM」とありますが、これにはどのような思いがあるのですか。
後藤 ユーザーとIBMは、ビジネスパートナーの方々を含めて、今後はともに協力しながら効果のあるイノベーションを実現していかねばなりません。U研の会員は、文字どおりユーザーです。バイヤーやコンシューマーのように、与えられた商品のよし悪しだけを吟味して、買うか買わないかを決めているわけではありません。単なるバイヤーなら、見当違いの提案には適当に付き合って聞き流し、求めているものをほかに探しに行けばいいでしょう。でも私たちユーザーは不要であればはっきり伝え、足りないなら指摘し、そのソリューションの可能性を感じれば完成度を高めるために意見する、そんな立場にあると思うのです。
ITの流行に踊らされて、効能より副作用の多いソリューションを闇雲に導入するのではなく、世界に先駆けて真に価値あるIT活用を生み出す団体でありたい。そんなU研活動をリードすべく、ユーザーとIBMがリアルな場で切磋琢磨する。NEXTではそうした場を実現していきます。「User & IBM」にはそんな両者の立場、「NEXT」には今ではなく、次の時代を切り拓く意気込みを込めています。ここでお話しした企画内容はギリギリまで検討を重ね、さらに充実させていく予定です。その過程は8月に開設するホームページや随時配信するメルマガで紹介していきます。今年はぜひ札幌の地に足を運んで、新たな歩みを始めるNEXT 2018をご自身の目と耳と手で体験していただきたく願っています。
[IS magazine No.20(2018年7月掲載)]
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User&IBM NEXT 2018 | 開催日程
11月7日(水)16:00〜18:30
11月8日(木) 9:30〜18:30
11月9日(金) 9:30〜16:00 (*当初予定の9:00スタートを、9:30スタートに変更しました。7月31日修正)
会場 | 札幌コンベンションセンター(札幌市)
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